国際結婚匿名希望 50代・女性

 私の主人は英国人。私がお米を愛するように、じゃが芋を愛する人です。我が家ではご飯の登場は4日に1度位の割合。私は‘郷’に入って、お米の地位をじゃが芋に譲りながら、平穏な結婚生活を営んできました。 
 が、あれは一ヶ月ほど前のこと。元気だけが取り柄の私が風邪をこじらせ床に臥しました。とても台所に立てる状態ではありません。主人は心配そうに枕元で何が食べたいか聞いてくれます。料理が得意でない彼は、私の食べたいものを買ってくる由。「ローストビーフ?」と聞くので、「ノー」。 「サーモンステーキ?」「ノー」。私は「お粥!」と答えました。病気の時はお粥に決まっています。

国際結婚 イメージ

 すると、そんな物を今まで聞いたことも見たこともない主人の顔は、ただ困惑の一文字となりました。「お粥とは一体何物?」「どんな形をしている?」「どこのスーパーで売っている?」私は目の前が真っ暗になりました。
 そうかこの人はお粥を知らない! 国際結婚をこの時ほど悔やんだことはありません。私は絶望で布団を頭から被りました。
 それから三時間後、主人は「これがお粥ですか?」とご飯茶碗を差し出しました。あっけにとられた私。口に含むとそれは確かにお粥、美味しいお米の味がしました。 
 翌日、日本の母から電話がありました。
 「もう熱は引いたの? 昨日は電話で三回、コリンさんにお粥の作り方を教えたけど大丈夫? いい亭主を持ったね。でも高いお粥だこと」母は言いました。本当です。わざわざ国際電話をかけなくても良いのに…。それにしてもよく日本語で母からお粥の作り方を教わったものです。こつこつと続けている日本語の勉強の成果が、現れたのでしょう。私は目頭が熱くなりました。

 私は暖めなおしたお粥を口に運びました。格闘した主人の愛情と、懐かしい母の味がしました。「ありがとう」と私は主人にお辞儀をしながら言いました。主人は「お粥って美味しいな」と言いながら、お辞儀を返してくれました。