真珠のように輝く米粒飯田 ペギー 様 20代・女性/埼玉県川越市 在住

 あの時に私は未だ中学校一年生だった。
 母国であるインドネシアは経済危機の状態に陥り、物価が高騰した為、生活するだけで精一杯だった。幸いに先進国から救援物資を頂いたので、なんとか通常より安い値段で日常生活用品と食料は手に入った。
 ある日に母は格安の値段で購入した日本のお米を炊いて食卓に出した。真珠のように輝く艶のある米粒を見た時に私は自分の目を疑った。口に入れた瞬間に「物凄く美味しい!」の一言しか頭に浮かばなかった。

真珠のように輝く米粒 イメージ

 母国の主食もお米だが、涙が出そうになるほど美味しいお米を食べたのは生まれて初めてだった。幼少時代から日本は私にとって憧れの国なので、高校卒業後に日本に留学する事を決心した。日本に居たらいつでも美味しいお米が食べられると思った。
 しかし、そう簡単にはいかなかった。家族の経済状況で生活費が他の留学生と比べて小額であるため、お米を食べれる日は週にたったの一日だけだった。後は小麦粉と一袋で百円のパスタで凌いだ。お米が大好きな私にとってそれは何よりも辛い試練だった。 
 日本語が上達した結果、時給の良いアルバイトに就いた時は生活費に余裕が出来た。
 やっと毎日にお米を食べる事が出来た。
 しかし、周りに居る日本人の同級生を見ると殆どはお米よりパンを好む。日本人である友人の家に泊めて貰った時は朝食にパンしか食卓に出ていないのを見て驚いた。何故お米よりパンを選んだかと聞いた時に友人はお米にすると手間隙かかるから、面倒くさいと答えた。それに実家でも朝食はパンという決まりだそうだ。
 私は日本人のお米離れという現実を知った時に心を痛めた。

 あれだけ美味しいお米があるのにも関らず、手間隙がかかるとお洒落ではないという理由でパンを選んだなんて正直に言うと寂しい。
 日本人にもっと日本で作られるお米の魅力に気づいて欲しい。そして、その美味しさを次の世代に伝えて欲しいと心の中でただ祈ってばかりである。