象印 ZOJIRUSHI

会社概要

あゆみ

CIを本格導入
1986年(昭和61年)

象印商品から象が消えた。昭和61年6月10日、例年の新製品発表会大阪会場を訪れた小売店・代理店・報道関係者は一瞬目をうたがった。みなれた象のマークはガラス魔法瓶以外からは消えていた。

ZOJIRUSHI CI ロゴ

CI導入による新しいロゴ

この日を境に、象に代わってCI導入による新しいロゴマーク「ZOJIRUSHI」が動き出し、関係者や消費者の間に定着していった。
昭和61年10月に毎日新聞社が行った全国企業認識調査(調査対象は企業の管理職)のデータによれば、「技術開発や新製品の開発に熱心だ」の項では1年前に比し「そう思う」が54.5%から61.1%へと約7ポイント上がっている。学生を対象にした「広告・広報活動が上手だ」では、同じく49.1%から14ポイントも上がって62.9%に達している。

これだけで結論づけるわけにはいかないが、ロゴマークの発表以後、ZOJIRUSHIの企業イメージは急速に上昇している。もともと象印商品は家庭用品であること、したがってテレビをはじめPRに力を入れてきたこともあって、その社会的知名度は高く、象のマークも広く認知されていた。それではなぜ、ここにきてCI活動を導入したのか。
一言でいえば、時代の変化に対応して企業の活性化をはかるためにほかならない。
昭和59年は魔法瓶業界も成熟期を迎え、高度成長とともに伸びてきた象印も、新しく始まる60年代を目前に、一つの節目を迎えていた。昭和58年度は減益となり、59年度は国内営業のマイナスを輸出が支え、売上高は微増にとどまっていた。ここでふたたび強い成長性を取り戻すためには、再活性化―――リニューアルして、新鮮さと若々しさを生み出していかなければならない。

一方、当社の商品を考えると、ガラス魔法瓶がルーツであるが、その保温・保冷の技術を軸に、家電商品、リビング用品へとアイテムを広げ、生活用品の総合化をはかってきた。魔法瓶の専門メーカーから生活文化用品の総合メーカーとして、生活文化そのものにかかわりをもつに至った。さらにステンレスサーモスをはじめ新技術による商品分野が拡大し、内需の成熟化にともなう輸出の拡大や、世界的デザイナーやメーカーとの提携による国際化とマーケットの拡大が必要となってきた。
ここにおいて社名、マークをはじめ企業イメージを総点検し、新しい時代に向かって進む象印のあるべき姿、目標を明示し、新しい道をつくりださなければならない。
実は、こうした思いをいちばん強く持っていたのは市川重幸社長自身であった。一部の社員の間にも同じ考えがあり、昭和59年5月7日、社長によってCI宣言が行われ、その目標は「先進性、技術力、ファッション性、国際性」の4つに絞り込まれた。CI委員長には、社長自らが就任した。
若手社員にも自由な発想をさせ、経営への提言をどしどし出させて活性化に“はずみ”をつけるのもCI導入の一つの狙いであった。 専門家の助言も得ながらプログラムを進め、それにつれて社内の意識改革、活性化、社外よりみた企業イメージは大いに高まって、CIの効果をあげた。

象のマークに愛着がなかったかといえば、「あった」と答えなければならない。そして人一倍愛着があったのは、生まれたときから、図柄は違っても象のマークのなかにいた市川社長自身であった。しかし、市川社長は次のように語っている。
「象のマークをどうするか本当は判断に相当苦しみましてね。夜、眠れないこともしょっちゅうありましたよ。象のマークは愛らしいとか、親しみがあるとかで、長年、企業の顔としてやってきました。しかし、象のマークがついているから売れる、という時代ではなくなったのです。真に商品の価値で勝負する時代になってきたのです」
従業員のなかにも、象マーク廃止に反対する声もあった。そこで、CI断行という革新のなかで、象印のルーツであるガラス魔法瓶にだけはこれを残した。
ガラス魔法瓶は、これ以上伸びる商品ではない。これから伸びる分野には、象のマークは使わない。だが、一つの愛着とCIの逆効果を想定して、限られた商品にだけは象は生きのびたのである。