象印 ZOJIRUSHI

象印マホービンのとりくみ

開発秘話

「薄型」にかけた、ブランド構築の闘い

空気清浄機のブランド構築へ向けて

平成11年、シックハウス症候群や花粉症の急増などを背景に、空気清浄機市場は、年間100万台に成長していた。象印は平成4年に市場参入したものの、売上は伸び悩み、シェアはわずか数パーセントにすぎなかった。快適環境商品を伸ばしていくためにも、空気清浄機の新製品には従来型商品の後追いではなく、新たな提案型商品の開発が求められていた。
当時、快適環境商品の企画担当者は苦々しい思いをかみしめていた。調理家電ではトップメーカーの象印でも、実績やブランド力に欠ける快適環境商品では、販売店のバイヤーはなかなか会ってくれない。
時には、「こういう商品は大手に任せて、象さんはポットを売っといたらいい」。と面と向かっていわれることもあった。そんなときに浮上したのが『薄型』の商品開発だった。

液晶テレビが開発の糸口に

某メーカーから発売された液晶テレビの、薄型でシンプルなデザインが市場で話題となっていた。社内からも「薄型でシンプルな液晶テレビはデザイン的にすぐれている。同じような薄型の空気清浄機はできないのか?」。という声が上がっていた。従来の空気清浄機は厚さ15〜16センチ。設置場所は壁際が圧倒的に多く、インテリア感覚で考えると『薄型』は大きな武器になるはずだった。

平成11年秋、薄型商品の開発が始まった。コンセプトは、「基本性能」「デザイン重視」「低価格」。薄くするとともに、HEPAフィルターを搭載するなど基本性能を充実させ、1万円前後の低価格に抑える。若い男性を意識した、シンプルで洗練されたデザインを採用することが決まった。
デザイン担当の岡島が初めて試作モデルを目にしたとき、そのモデルは、厚さわずか6センチ。量産ベースにはのらない仕様だったが、非常にインパクトがあった。それから2週間、岡島は液晶テレビの資料を集めてイメージをかため、デザイン画に取り組んだ。シンプルなものほどデザインは難しい。わざと角に丸みをつけ、スリット部分の角度や幅を変えてみたり、あえて形を崩して比較し、もう一度シンプルな形に作り直していく。その作業を何度も繰り返した。
パネル部分にも工夫を凝らした。社名以外の文字表記をいっさい取り除き、ピクト表示を採用した。この業界初の試みはかねてからデザイン室であたためていたアイデアだった。ボディはメタリックシルバー、ロゴマークは本体にシルク印刷、ピクトグラフは拡散インク仕様で光る工夫を施し、高級感を演出した。さらに斜めに三度傾斜をつけて、コンパクトなイメージを追求。シンプルで、スタイリッシュなデザインが完成した。

高性能・低コストの壁

開発担当の麦倉は、製品化できる現実的な企画を検討した。目標値は10センチ。一番の課題はHEPAフィルターを薄型化することだった。高性能な分フィルターの面積が大きく、従来品は厚みが2〜3センチもあった。フィルターメーカー数社に協力を求め、試作品のテストを繰り返した。最終的に採用したものは、フィルターに静電気を帯電させ、大きなほこりはろ過式で、小さなほこりは静電気で取るという画期的な方式で、厚さは従来の半分、量産化できる限界の1.2センチに縮まった。
コスト面でも大きな課題があった。高価なHEPAフィルターを搭載している商品は安くても1万5000円はする。麦倉は、従来の設計方法を根本から見直し、部品点数を従来の半分にとどめる新しい設計を提案した。これによりコストのかさむ金型費を大幅に抑えることができた。また、空気清浄機初の海外生産にも踏み切った。これらの革新を成功に導いた陰には開発チームの先輩や同僚の協力があった。

かならず売れると確信

社内の新製品オリエンテーションをひかえ、企画担当者には一抹の不安があった。いくらすぐれた商品でもブランド力がない象印製品は、バイヤーは相手にしてくれない。まずは営業の心をつかみ、売る気になってもらうことが肝心だと思った。それにはある秘策があった。営業担当者への初めてのお披露目のとき、あえてカバーで商品を覆い隠した。商品説明をした後に効果的に商品を発表するのが狙いだった。この演出に、会場はざわめき、驚きの視線が商品に注がれた。これだけ営業が反応してくれるなら売れるに違いない。会場に居合わせた岡島は、その瞬間、ヒットを確信した。

平成12年9月に発売された「エアブリーズ(PA-LA08)」は、奥行き13.5センチ、足の部分を除いた肉厚はわずか9.9センチ。超スリムなデザインで、みんなをあっといわせた。そして、その年の「グッドデザイン賞」を受賞。シンプルなデザインが性別や世代を超えて受け入れられ、POSデータの集計で12ヶ月連続ナンバーワンを記録する大ヒットとなった。
それに続き、業界各社は次々と薄型タイプを開発。メタリック調のデザインも一般的になり、空気清浄機はデザイン家電としての地位を確立した。
開発チームは、その後も卓上タイプやファミリータイプの薄型商品を開発し、2年連続して「グッドデザイン賞」を受賞。空気清浄機業界に象印ブランドを広めた。

開発担当者
麦倉 義文岡島 忠志
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