ふるさとごはん佐藤 様 30代・男性/福島県 在住

 就職先へと上京し、それと同時に始めた一人暮らし、仕事に遊びに忙しく、実家に帰るのは二年振りでした。 久々の家族対面に、照れ臭そうにする僕に、母は、「何だい、その不良みたいな茶色い頭は?」「オシャレだよ、オシャレ。」
 そのやり取りに、父と弟はゲラゲラと大笑いです。一気に僕の緊張はほぐれ、おかげで、昔いた頃の、和やかな雰囲気を思い出させてくれました。 
 二年振りの、家族揃っての夕食です。ほくほく、炊きたての、地元の新米を口いっぱいに頬張りました。炊きたてのご飯がこんなに美味しい物だったのか、二年間、コンビニの弁当か、外食ばかりの生活だった僕に、改めて、その味を実感させられました。そこには、母の手料理と、家族で食べる食卓というものが、後押しされていたからに違いないでしょう。あまりの美味しさと、懐かしさに、僕の目から涙が溢れそうになりました。家族には見せまいと、必死に涙をこらえながらも、またご飯を頬張る度に、涙がこみ上げてくるので、下向きで黙々と懐かしの味を堪能するしかありませんでした。 
 三日間の帰郷もあっという間に過ぎました。寂しさが募る中、帰りの電車の中で、母が作ってくれた、おにぎりを頬張りました。おふくろの味に、また涙が溢れてきました。
 しかし、もう僕に涙をこらえる気力はありませんでした。涙がどうどうとこぼれ落ちながら、僕は、三つのおにぎりをしっかりと噛みしめました。
 三日後、僕は母に電話をしました。「母さん、炊飯ジャー買ったから、そっちの米、送ってよ、それと、何か、母さんの得意料理のレシピ教えてよ。」僕は、少しでもふるさとを身近に感じる事が出来るよう、自炊生活を始める事にしました。母の手料理に挑戦です。