子供相撲の賞品鈴木 貞子 様 60代・女性/福島県 在住

「ごめんね、お米がないの、だからパンにしてね!」
と私が済まなそうに子供たちに言うと、皆、黙ってパンを食べ始めました。
 我が家は、私と夫、そして長男13才、二男10才、三男7才、そして四男3才と、当時はめずらしく4人の男の子がいました。みんなワンパクで障子はボロボロ水はびちゃびちゃ、その日は夏休みでしたので、“早く夏休み終わらないかな!”と思っておりました。
とにもかくにもお米がないのです。お米を買うお金がないのです。夫の給料日まであと2日、それまでどうしよう!

「お母ちゃん! 相撲大会に行ってくるね!」と長男。
そうそう今日は地区の子供相撲大会の日でした。
「頑張ってね!」そう言って私は長男、二男、三男を送り出しました。

夕方、遠くから子供たちの声が聞こえてきました。玄関まで出てみると、長男の手に何か大きな白い袋が見えます。
かけ寄りますと、それは10キロのお米でした。
二男が「お母ちゃん、お兄ちゃんせっかく優勝してラジコンカーもらったのにね、準優勝の子のお米と交換しちゃったんだよ!」と残念そうに呟きました。
長男は今、我が家にお米がないのを知って、それで準優勝の子の賞品のお米と優勝した自分のラジコンカーを交換してくれたのです。
私は長男を思いきり抱きしめました。そして耳もとで言いました。「かっこ良すぎるぞ!」その夜はそのお米をたいて、みんなでおいしく頂きました。