象印 ZOJIRUSHI

本当においしい揚げ物のためにオーブントースターができること

開発担当者 安藤 裕樹

きっかけは、スーパーのお惣菜売り場で買い物をしている時でした。コロッケやからあげの温め直しはオーブントースターが良いとされるけど、それって本当においしくできているのかな、ってふと思ったんです。
僕のような共働きの家庭は、十分な家事の時間が取りにくく、料理も時短。お惣菜をプラスする日も少なくありません。特に揚げ物は、時間と手間がかかるために買うのが当たり前のようになっています。
そこで実際に調べてみると、オーブントースターで温め直しをするものは、コロッケやからあげ、トンカツなどの揚げ物やピザなどのお惣菜が大半でした。また、30代の夫婦共働きの家庭は、「揚げものは買ってきて温め直す物」という声も。
そこから、揚げ物がおいしくできるオーブントースターの開発が始まりました。まず、オーブントースターや電子レンジなど、市場に出ているさまざまな機種を集め、それらを使った「温め直し」と「揚げたて」を食べ比べてみました。結果はどの「温め直し」も「揚げたて」においしさが勝らなかったんです。

「揚げたて」のキモは“温度差”!

では、どうしたら「温め直し」で「揚げたて」の状態を再現できるのでしょうか。
まずは、「揚げたて」と「温め直し」の状態をデータ化することからはじめました。すると、「揚げたて」の状態では表面温度と中心の温度差が大きく、表面温度が高いほど「揚げたて」に近いサクッとした食感になることがわかったのです。
つまり、“表面温度と中心温度の差が大きく、表面温度が高い”これが「揚げたて」のキモだったんです。
しかし、「揚げたて」に限りなく近いおいしさをオーブントースターで再現することが大変でした。
揚げ物の「温め直し」には油ハネ防止のためトレーが必要ですが、これにより下ヒーターからの熱の伝わりが弱くなり、裏側がしんなりとなってしまうのです。
そこで、長時間加熱したいところですが、上下のヒーターが同時にオンする従来のオーブントースターでは表側がコゲてしまいます。
加熱しすぎたら温度差が生まれないし、高火力にしたら定格電力に収まらない…ジレンマですよね(笑)。

“高火力スイッチヒーティング”の誕生

したがって、「揚げたて」を再現するために考えた方法としては“高火力のヒーター※1を配置し、上下のヒーターを切り替え制御する”ことで「揚げたて」に限りなく近いおいしさを実現することでした。
そのテストでは、コロッケやからあげ、とんかつなどの種類別、個数別にその時の外気温や庫内の温度を想定して何千パターンものフローを作成し「揚げたて」の状態が再現できるよう、上下の各ヒーターの火力、時間、それらを変化させるタイミングなどを一つひとつ検証していきました。
研究を重ねてたどり着いたのは、「高火力スイッチヒーティング」という業界初の技術※2
搭載するすべてのメニューでこのような作業を繰り返し、メニューに合わせた加熱が実現できたのです。

上下ヒーターを別々に制御する「高火力スイッチヒーティング」

※1 上:1000W、下:1000W
※2 オーブントースターにおける上下ヒーターを交互に加熱する技術 2019年8月2日新聞発表における当社調べ

約1万枚の食パンを検証!大好評の「サクふわトースト」

おいしいトーストを追求した「サクふわトースト」機能は、従来品で大好評をいただき、この製品にも搭載しました。「マイコン自動コース」のメニューには、この他に通常の「トースト」機能もあって、初めての方には「どこが違うの?」って思われるはず。当然です。簡潔に申し上げると「サクふわトースト」は、まさにその名の通り、表面のサクサク感がより強く感じられ、対して中心部はふわふわ感が感じられる焼き方をします。ぜひ、2種類のトーストを食べ比べて、お好みを見つけていただきたいですね。実は、「サクふわトースト」の開発時も、先程お話したフローを作成しました。開発チームで検証した食パンは約1万枚。地道な作業でした(笑)。

「サクふわトースト」機能で焼いたトースト

どのようなインテリアにも馴染むスタイリッシュなデザインを追求

最近では、インテリアの一部として家電の見た目を気にする方が増えています。それを踏まえて、マットな黒の塗装やガラス扉の黒のドットデザイン、操作部の文字を排除するなど、スタイリッシュで高級感のあるデザインに仕上げました。アイランドキッチンなどに置いた時に背面が見えるケースにも配慮して、裏面にも前面や側面と同じ塗装を施しています。
また、扉が完全にはずせて庫内のすみずみまで掃除しやすいこと、「もち焼きネット」でおもちが落ちない工夫、最長30分のロングタイマーなど、毎日使うからこそわかる魅力もあります。
象印には、コーポレートスローガンである「日常生活発想」を大切にする企業精神のもと、安全性はもちろん、誰にとっても使いやすいことに長年こだわってきました。その精神をきちんと受け継ぎながらデザインについてもとことん突き詰めたのは、オーブントースターでこの商品が初めてかもしれません。

おいしい!楽しい!多彩なライフスタイルをご提案

このオーブントースターは、いろいろなライフスタイルが提案できます。たとえば平日には、朝はトースト、昼はピザ、夜はお総菜の温め直しなどで食卓を豊かにできますし、休日のホームパーティでピザを作ったり、子どもとパン作りにチャレンジしたり……。
日々のさまざまなシーンでおいしさや楽しさを実感していただけたらと、思いを込めて開発を行いました。
試食会では参加されたほぼ全員から「おいしい」と感想をいただき、自信にもつながりました。おいしさとデザイン性の両方を求める全ての方に、このオーブントースターをおすすめします!

象印マホービン株式会社 第二事業部 サブマネージャー 安藤 裕樹さん

※所属部署・内容は取材当時のものです。