ZOJIRUSHI

INTERVIEW
インタビュー
VOL.07

おにぎりやごはんのための“炊飯”という文化までも、世界へ。

日本の食文化を体現するおにぎりを通して、世界へごはん食の豊かさを届けたいと考える象印マホービンも、一般社団法人おにぎり協会の企業会員です。その新事業開発室長である岩本雄平が引き続き話を伺います。

前編はこちら

一般社団法人おにぎり協会 代表理事
中村祐介さん

IT/デジタルマーケティング&クリエイティブの会社経営をしながら、2014年に一般社団法人おにぎり協会を設立。TBSテレビ「マツコの知らない世界」をはじめメディア出演多数。2024年2月に新潟県南魚沼市など7自治体の首長ら、企業などと共に「おにぎりサミットⓇ」を初めて開催した。

お米と具材。企業と自治体。
どちらも、組み合わさって、良くなる。

象印マホービン株式会社 新事業開発室 室長 岩本雄平(以下、岩本):

私たちは日本国際博覧会(大阪・関西万博)へ出店するのですが、そこで日本のおにぎり、世界のおにぎりと称して、日本や世界各地の具材を使ったおにぎりのレシピを地元の方と共創する活動をしています。その活動を通して改めて、おにぎりって何を入れてもおいしくてすごいな、と驚いています。

一般社団法人 代表理事 中村祐介さん(以下、中村さん):

企業が生産者や自治体の方と共創するのは、とても面白い試みですよね。とはいえカルチャーなどは異なるので、それぞれのカルチャーを理解した上で、媒介者として社会的なインパクトにつなげていくのが、僕ら協会の仕事だと思っています。おにぎりって確かに包容力がすごいんです。何を入れてもおいしいということに加えて、手で食べるからおしぼりも必要だし、お水やお茶ともよく合うし。具材もそうですが、一緒に組める団体が多いというのも魅力。だからこそ、その人たちを媒介する協会も必要になってきます。

岩本:

象印マホービンも自治体の方と共創しているおにぎり協会さんに魅力を感じ、2023年に企業会員になりました。同じおにぎり協会の会員でもある和歌山県みなべ町、埼玉県深谷市とは、おにぎりのレシピ開発でもご一緒させてもらっています。

中村さん:

日本のいまの課題のひとつに、自治体と企業などの連携が足りていないことが挙げられます。手を組むからこそできることがたくさんあるはずなのに、もったいないですよね。その橋渡しができることが嬉しいです。課題を抱えている自治体はまだまだたくさんあるので、象印マホービンさんと手を組むことで、背景のストーリーも含めてコミュニケーションできると面白さが生まれそうですね。その土地だけの歴史や風土がきちんと伝わることで、ツーリズムにつながっていくとも思います。ただおいしいだけではなく、ストーリーを知ってもらうことでさらに興味を持ってもらえる。そんなふうにして、日本の魅力をおにぎりで最大化できたらと願っています。

おにぎりだけでなく、炊飯文化まで届けたい。

岩本:

日本国内でのお米の消費量の推移や人口減少を踏まえると、海外で、もっとごはんの魅力を知ってほしいという思いがあります。それが、大阪・関西万博出店の理由のひとつにもなっていますね。僕らがごはんと同じ感覚でパンやパスタを選ぶように、週に一度はごはんを食べよう、という文化が世界中に広がることが実は最終目標です。ごはんのおいしさを知ってもらうことは大前提なのですが、それだけでなく、日本各地の食文化おもしろいね、現地まで行ってみたいな、と興味をもっていただくことも大切だと思っています。

中村さん:

一般家庭でのお米の消費量が減っている、という話題がありますが、実は、おにぎりの消費量は増えているんです。中食・外食でのお米の消費量も増えています。働き方が変わって自炊率は下がったけれど、食事は必要ですもんね。猛暑などの影響もあり、今年はお米が不足傾向になり、ニュースなどでも多く取り上げられました。困惑した方も多いかと思いますが、需要が増えたことでお米農家さんの一部はモチベーションが上がったようです。東側中心ですが作付け面積も増えています。

岩本:

そうですか。それは嬉しいですね。お米あってのごはんですから。

中村さん:

100年を超える企業で、半世紀以上の炊飯技術への研究がある象印マホービンさんがおにぎりを手がけるというのが、すごくいいですよね。海外でおにぎりの注目度が高まり、再現したいとなっても、おいしいごはんが手に入りにくいと難しい。おいしいおにぎり、ごはんのために炊飯は不可欠ですが、実は、お米を炊くという調理法は海外では珍しいもの。パエリアなどは、炒めてから煮るので、炊飯とは似て非なるものです。以前、海外の友人(アメリカ人)宅で鍋を使ってお米を炊いたことがあるのですが、沸騰したはずのお湯が全然減らないことがあって。よく見ていると、気を遣った友人が時々水を足していたんです(笑)。知らない方にとって「炊く」という調理法は特殊なんだなと実感しました。

岩本:

きっとパスタを茹でるような感覚で捉えたのですね。

中村さん:

そう。ごはんをおいしく炊く・食べるツールやソリューションも合わせて提供することが大事ですし、象印マホービンさんなら一気通貫でそれが届けられるのではないでしょうか。

岩本:

本当にそうですね。炊飯文化やおいしいごはんそのものの価値を、おにぎりを通して伝えたいと思っています。そもそもONIGIRI WOW!プロジェクトは、象印マホービンが2013年からやってきたごはん食の啓発活動の一環でもあるんです(参考:「きょうも、ごはんと。」サイト  )。ごはんって、どんな国の料理とも合うところが大きな魅力だと思っているので、これからもっと世界中の食卓にのぼってほしいな、と心から思います。

おにぎりはもっと自由でいいし、おにぎりで僕たちは平和を願いたい。

中村さん:

海外の人におにぎりを紹介した時に評判の良かったレシピって、日本人の感覚だと一瞬びっくりするものもありますよね。おにぎりはオープンソースのプラットフォームと前にいいましたが、国や地域それぞれの好みで自由に拡張していってほしいと思っています。

岩本:

そうですね。僕らもその新たなレシピに出会ってみたいです。先日、高松で「きなこおにぎり」に出会ったとき、最初は驚きましたが、食べたらすごくおいしかった。よく考えたら、おはぎなどでありうる組み合わせですよね。万博に向けて各国の方たちと話すなかで、スイスの方たちからは「チョコレートと合わせたらいいんじゃない?」と言われたこともありました!

中村さん:

チョコレート、ありだと思いますよ! 僕らが中東カタールのドーハで紹介して人気だったおにぎりのレシピは、抹茶と大納言とクリームチーズ、練りゴマ、はちみつ、くるみを組み合わせた「スイーツおにぎり」でした。「甘くておいしい」と。日本人の発想からは生まれにくい組み合わせですよね。海老天おにぎりも人気でした。好みに合わせて、どれだけ自由にカスタマイズしても受け止めてくれるごはんって、すごいですよね。
(レポート記事 https://www.onigiri-japan.com/archives/3134  )

岩本:

抹茶と大納言とクリームチーズですか!本当に、おにぎりの包容力のなせる技ですね。

中村さん:

さらにいうと、最近は鮨屋やラーメン屋がおにぎりを販売するケースもちらほら。朝からお鮨は行けないけど、お鮨屋さんが作ったおにぎりなら食べたい、と思いますよね。さらにラーメン屋こだわりの焼豚を使ったおにぎりとなれば、それも食べてみたいと思う。ビジネス的にも新たな価値が生まれるし、フードロスという観点でも貢献できるし、おにぎりはすごいんです。

岩本:

どんな文脈と掛け合わせても、すごい。まさに「オープンソースのプラットフォーム」ですね。
ところで、中村さんは子どものころからおにぎりがお好きだったんですか?

中村さん:

今はこんなに元気なので想像しにくいかもしれませんが、実は僕、子どもの頃、からだが弱かったんです。中学2年生の頃は食事が取れなくなって体力が落ち、学校を休んでいた時期もありました。そんな時、母親は、なんとか食べられるものを出してあげようと工夫して食事を作ってくれました。食べられないのに、食事を出してくれるというのも、贅沢かもしれませんが当事者にとってはつらいものがあって。食べた方がいいのだろうな、これなら食べられるかも、と思ってある日、母親が出してくれたおにぎりを食べたんです。それがすごくおいしかった。そこから徐々に食事が摂れるようになっていきました。梅干しのおにぎりでしたね。

岩本:

現在、おにぎり協会のHPで中村さんが「推し」のひとつとして紹介している具ですね。

中村さん:

そうそう。海苔が巻いてあったのですが、コンビニのようなパリッとしたのではなく、巻いてから時間が経過したしっとりした海苔でした。味わいを最大限楽しむなら、巻きたてのパリッとした海苔がおすすめですが、おいしかったな、と思い出すのは、海苔がしっとりした母親が握ってくれたおにぎりですね。

岩本:

中村さんがよくおっしゃられているように、やはりおにぎりって誰かのために作る料理ですね。
私たちの部署は象印マホービンの100周年(2018年)に発足して、知見を広げるためにシェアオフィスに入居したんです。当初、入居している企業同士で花見をしよう!となった時に、象印の炊飯ジャーでごはんを炊いて、おにぎりにして持っていったことがありました。まだ顔見知りの方も少ないような時期でしたが、その時とても喜んでもらえて。あの時のおにぎりおいしかったよ、と言ってもらえることもあり、すごく嬉しかった記憶が鮮明にあります。おにぎりって、コミュニケーションツールでもありますよね。
そんなおにぎりを通して、大げさですが、世界が平和になったらいいな、という思いもあります。どんな具材でも受け止めてくれる包容力のあるおにぎりには、それだけのポテンシャルがあると思うので。

中村さん:

ぜひ一緒に、国内外におにぎりの、ごはんの魅力を伝えていきましょう。

一般社団法人おにぎり協会
https://www.onigiri.or.jp/