
とことん使える30Lをめざして
「本当に使ってもらえるオーブンレンジ」。これは発売当初から変わらない、「EVERINO」シリーズのコンセプトです。今回、新たなサイズを開発するにあたっても、さまざまな角度から利用者の本音を分析。30Lのオーブンレンジユーザーの多くがオーブン機能よりも「あたため」などのレンジ機能をよく使っていることに加え、その「あたためムラ」や「加熱・解凍の失敗」に不満を抱いていることにもあらためて着目しました。これまでの家庭用オーブンレンジでは庫内が広くなればなるほど「あたためムラ」が起こりやすい傾向があるということに気づいたのです。「真ん中だけアツアツなのに、端っこはぬるい」「厚みのある食材の解凍や加熱がうまくいかない」など、挙がっていた不満の多くも基本的なレンジの「あたため」機能に関するものでした。
そこで、私たちの開発する30Lのオーブンレンジでは、この“日常”の課題に向きあいながら、「毎日の調理」がより快適になるのはもちろん、「特別な日の料理」まで安心して楽しめる商品にしようと考えました。

ニーズのために、常識をこえる
これまでの家庭用レンジでは、「1ヵ所から加熱する」方法が常識とされていました。マイクロ波を発生させるエンジン(マグネトロン)が庫内容量に関わらず、1つしか搭載されていないためです。しかし、庫内が大きいオーブンレンジほど「あたためムラ」を抑えられない。これは、初代「EVERINO」開発時からわかっていたことでした。
そこで今回、30Lのために開発したのが、“ツインエンジン構造”という新技術。エンジン(マグネトロン)に着目し、これを1つから2つにするという、従来の家庭用レンジにはなかった業界初※の仕組みです。

2方向からの加熱で可能性が広がる
“ツインエンジン構造”の大きなメリットは、2方向から加熱することで「あたためムラ」を抑えられること。そこで、理想の配置を求めて何度も検証を繰り返した結果、「底と奥」からの加熱が構造的にベストだと判明しました。しかし、マグネトロンだけではなく関連する部品の数も2倍になるため、取りつける場所を工夫しなければ商品サイズが大きくなりすぎてしまい、一般家庭に設置しづらくなってしまいます。限られた設計スペースの中で試行錯誤し、指針としていた奥行き45cmの一般的なカップボードにもすっぽり収まるサイズを実現しました。
もともとは「あたためムラ」を抑えるために開発した“ツインエンジン構造”でしたが、エンジンが2つあり、2方向から加熱できることで、「いろんな食材を同時にあたためる」「短時間で具材にしっかり味をしみこませる」など、できることが一気に拡大。オーブンレンジとしての可能性も大きく広がりました。

金属製の角皿だからできた、上下でちょうどいい加熱
「ごはんとおかずなど、一度に複数品をあたためたい」というのも、30Lのオーブンレンジユーザーが抱いてきたニーズのひとつ。一般的な30Lのオーブンレンジでは、庫内底面に2品置いてあたためても、食材によってあたたまるスピードが異なるため、それぞれを適温にあたためるのは難しいのです。そこで、“ツインエンジン構造”と庫内サイズの特徴を活かして、庫内を上下に分けてあたためをコントロールできればうまくいくのではないか?と考えました。しかし、そこには難題がありました。それが、庫内スペースを仕切るための角皿です。これまでの角皿といえば金属製が主流で、レンジには使えないのが当たり前でした。「ならば、いちから作るしかない」と発想を切り替えてつくりあげたのが、金属と耐熱樹脂を組み合わせた象印独自の角皿です。金属部分にはスパークしにくい厚さのアルミを用い、庫内と接する角皿の周囲を耐熱樹脂でカバーするなど、何度も試作を繰り返し、安全性にも細心の注意を払いました。
上段と下段を分けられることで可能になったのは、4人家族全員分のおかずを一度にあたためることだけではありません。たとえば、温度の上がり方が異なる汁物とごはんを同時にあたためたり、上段で惣菜をあたためながら下段では冷凍ごはんを解凍したり──さまざまな品をまとめて、しかも段ごとに適温に仕上げられる使い勝手が実現。社内試験でもその便利さがよくわかり、大変だった開発の苦労が吹き飛ぶような手応えを感じました。
▲ 金属と耐熱樹脂を組み合わせた、象印独自の角皿
▲ 上段と下段で、異なる食材を同時にあたため
特別な楽しさを、すべての方に
毎日の「使いやすさ」や「安全性」を追求する一方で、私たちが同じくらい大切にしたかったのが、30Lならではの“ワクワクするような本格感”です。オーブン機能とレンジ機能を組み合わせて、外側と内側の両方から食材を加熱できる機能は、ハレの日のごちそうづくりに大活躍。約2キロの丸鶏や分厚い焼き豚も、ちょうどいい焼き加減に仕上げられます。さらに、オリジナルの角皿に「スチームポケット」をセットすることで、手軽に効率よく蒸気を発生させるスチーム加熱も可能になりました。
できることが増えて、機能がレベルアップして、これまで「ちょっと難しそう」と思っていたメニューにも安心してチャレンジできるから。大きくなった「EVERINO」で「特別な日」のお料理もうんと楽しんでいただけるよう、簡単だけど食材のうまみを引き出し、かつ見映えのするレシピも多彩に用意しています。

私たちの挑戦が、レンジの常識を変える
これまでの常識にとらわれない発想で、私たち自身が「これはいい!」と心から実感できる新機能を詰め込んだ、30Lの「EVERINO」。
“ツインエンジン構造”を活かした解凍メニューや、具材がほどよく煮込まれたビーフカレーは、社内外で大絶賛。「お客さまにも自信をもってお届けできる」と、あらためて確信することができました。
大型のオーブンレンジを選ぶ際にお客さまが抱く期待にしっかり応えながら、それを超える便利さや楽しさをお届けしたい。その想いをかたちにするため、さまざまな部署と連携、開発メンバーも大幅に増員され、ゼロからの開発に挑戦。ひとつひとつのプロセスを通して、私たち自身も大きく成長できたと感じています。
それぞれのサイズにふさわしい価値があるから。みなさまの毎日にぴったりフィットする30Lの「EVERINO」、その大きな魅力をぜひ体感してください。

象印ものづくりの
「ここだけの話」
「私がユーザーを代表して伝えた“わがまま”を、開発メンバーの皆さんが常識破りの技術で実現してくれたことに感動!」
大塚 萌衣 / 商品企画担当
「さまざまな課題に直面しながらも、知恵を絞って新たなアイデアを加え、粘り強くカタチにする。この商品そのものが“象印らしさ”の結晶です」
椋田 朋訓 / 設計開発担当
※所属部署・内容は取材当時(2025年9月)のものです。