ライスマイル

ライスマイルについて
ごはん食で子どもは変わる

第4回

赤ちゃんから
2歳ごろまでの食事が重要

子どもの脳を健やかに育む
ごはんを取り入れよう!

「最初の1000日」の食事が
子どもの将来の健康と幸福に
大きく影響する!

世界的に有名な研究で「妊娠してから2歳前後までの人生最初の1000日間、この期間にどんな食事をしてどのような栄養をとったかで、その人の一生が決まる」というものがあります(興味のある方はダイヤモンド社の「人生で一番大切な最初の1000日の食事」をぜひ)。
1000日とは、ママのお腹にいる十月十日と2歳ごろまでの約3年間。この時期の栄養状態や腸内環境の状態が、肥満やアレルギーといった健康状態や脳の発達に影響することがわかっています。子どもを育てていくうえで、この最初の1000日がいかに大切か、ということについてきちんと理解しておきたいですよね。

最初の1000日は成長と発達が目覚ましく、一生のうちでこれに並ぶ時期はないのですが、赤ちゃんは1歳になるまでに体重が出生時の3倍に、脳も同じようにぐんぐん大きくなり、2歳になるころには、大人の脳の大きさの約80%にまで成長するといわれています。このように急速に成長していく時期に、栄養が欠かせないのは明らかです。さらに2歳を過ぎて6歳ごろまでに脳の神経回路は約90%が完成するといわれていて、2歳の時点で栄養欠乏になっていないことが重要です※1。栄養欠乏は体の成長や発語の遅延にも影響しますが、急激に発語が増えて大人との会話が成立するようになる3歳になるまでに必要な栄養素で脳を満たすことがもっとも重要であると「最初の1000日」の研究は説いています。この時期の栄養状態が、その子どもの一生を左右し、物事を考えていく脳の基盤になるとしたら、どんな食事を与えるかが重要になるのは当然のこと。もちろん、栄養バランスのとれた食事が望ましいのですが、さまざまな栄養素の中でも、特に鉄分をしっかり摂る、ということが子どもの脳や心の発達につながります

体の成長と脳の発達には
鉄分が重要

鉄分と聞くと「レバーに含まれているもの」「貧血予防に摂ったほうがよいもの」といった認識の方が多いと思いますが、子どもにとって鉄分がいかに重要かを充分理解している方は少ないのではないでしょうか。では、鉄分というのはどんな働きをするものなのでしょう。
成長期の子どもの脳と体をつくる6つのキーワードとして推奨しているのが、筋肉や免疫をつくる「たんぱく質」、骨をつくる「カルシウム」「ビタミンD」、脳をつくる「DHA」、血液をつくる「鉄」、腸を整える「発酵食品」。鉄分は血液をつくるのに欠かせない栄養素です。全身の細胞に酸素を送り届ける、とても重要な役割をするのが血液ですが、鉄はたんぱく質とセットで血液の赤血球中のヘモグロビンをつくります。そのため、鉄が不足するとヘモグロビンがうまくつくれなくなり、酸素を充分に運搬することができなくなってしまうんですね。特に脳は、体の中でもっとも多くの酸素を必要とします。実は、赤ちゃんを含む子どもも「鉄欠乏性貧血」になります。貧血というと、「立ち眩みがする」「肌が青白い」などの症状を思い浮かべるかもしれませんが、それだけでなく、「疲れやすい」「集中力がない」などの症状も貧血が背景にあることが多いもの。子どもの貧血は、ママの妊娠中の貧血にまでさかのぼりますが、それは子どもがお腹にいるときに鉄を受け取り「貯蔵鉄」という形で蓄えて生まれてくるからです。

出産時に臍帯血の貯蔵鉄が低いと5歳の時点で言語発達や運動能力の発達に関連するという報告があります※2。つまり、貧血のママの子どもは貧血のリスクが高いといえます。貯蔵鉄不足はヘモグロビンに異常がでないため、目にみえないのでわかりにくいもの。生後6ヶ月を過ぎるとママにもらった貯蔵鉄が枯渇することから貧血リスクが高まり、母乳中の鉄分も減少していくことから米国小児科学会では1歳での貧血検査が推奨(実施)されています。
「よく泣く」「感情表現が乏しい」「発語、認知能力が低い」などの発達に不安を感じる場合は鉄欠乏の可能性があり、それに気がつかないまま子育てを続けるケースも見られます。子どもにとって鉄分の欠乏は見過ごしてはならないものなのですが、どのようにすればコンスタントに摂れるのかを次章で説明します。

鉄分は、
最も摂取が難しい栄養素
鉄分の摂取にはごはんを主食にした
和食が一番

子どもの健やかな発達に欠かせない鉄分ですが、問題は、鉄分は吸収率の低い栄養素だということ。厚生労働省が定めている食品摂取基準の量を満たすのが、最も困難な栄養素で、補給しにくいのが現実です。鉄分補給というと、ほうれんそう、ひじきなどを思い浮かべますが、非ヘム鉄(植物性食品)は吸収率が低いため、赤身の肉や魚などのヘム鉄(動物性食品)を意識して摂ることをおすすめします。血液をつくるにはたんぱく質も必要なので、赤身の肉や魚なら「たんぱく質+鉄分」が効率よく摂ることができます。第1回目でお話ししたように、鉄分は朝食に摂ると利用率が高いことがわかっているので、ぜひ朝食から鉄分を摂るようにしたいものですが、この場合、米食のほうが軍配が上がりやすい。ごはんを主食にすると、おかずに自然と焼き鮭やあさり、しじみのお味噌汁などを組み合わせやすく、これらは鉄分をとても豊富に含むのです。他にも納豆やほうれん草の胡麻和えなどの副菜も有効です。

夜はみなさん、ハンバーグや肉じゃが、生姜焼きなど鉄分が入ったおかずを食べると思いますが、まずは朝ごはんの主食をお米にしてみてください。そうすると、鉄分も一緒に摂る献立を作りやすいんです。鉄分は吸収されにくい上に、すぐに消費されてしまうという特徴もあって、毎日コツコツと摂り続けるしかないのです。朝昼晩の食事に、4つの鉄強化食材(あさり、豚赤身肉、牛こまぎれ肉、赤身魚)をおかずとしてどんどん取り入れて、お米を主食にした和食の献立を続けましょう。この4つの食材は、鉄の含有量・吸収率ともに優秀なので、効率よく鉄分を供給できるのです。そして、納豆やほうれんそう、小松菜、海苔、ごまなども常備して、鉄分をさらにオン。鉄貯金はとにかく毎日続けることが大事です。食事づくりや子育てに疲れてしまったら、鉄(Fe)が添加されているヨーグルトやチーズ、おやつなどを与えて無理せずに続けていきましょう!

食べる内容だけでなく、
楽しく食べる食環境も育脳に
つながります

お米を主食にし、鉄分を豊富に含むおかずを組み合わせた和食の献立を毎日続けることの重要性はご理解いただけたと思います。それと同時に大切なのは、おいしく楽しく食べる、という食事タイムの雰囲気づくりです。子どもの食事に悩みはつきものですが、食べるのが遅い子どもは「美味しいね」「このお野菜はかぼちゃといってね」というような親の声がけ(コミュニケーション)が乏しく、早食いの子は親が次々とスプーンを口に運んでしまうなど、急かしがちであるという報告もあります。
子どもは親の目線を独占したいもの。まだ自分で食べられない時期には、「甘いね~」「これ、ちょっと酸っぱいね~」などと話しかけながら口に運んであげると、食べることそのものが楽しい時間になり、記憶に刻まれます。つかみ食べができる時期になれば、そこらじゅうが汚れることは大目にみてあげてください。脳に刺激を与える体のパーツで最も影響力を持つのが手(指)と口腔環境(唇や舌)なので、つかみ食べはそれ自体が育脳になるのです。

咀嚼もそれ自体が脳トレで、幼稚園児の咀嚼能力と知能指数などには相関関係があることが報告されています。"おふくろの味"という言葉に代表されるように、記憶と五感には強い結びつきがありますが、五感をフルに使うのが食事なので、視覚、味覚をはじめ、いい匂いであるとか、咀嚼した時の音であるとか、食べながら楽しい時間を過ごせたらいい記憶として心に残るのです。どんなにごはんが美味しくても、緊張を強いられたり、急かされたりしたら、子どもは食事そのものを楽しむ余裕がもてずに怖いものとして捉え、食欲をシャットアウトしていってしまいます。食卓が楽しかったかどうか、ということが、その後の摂食行動の指針になりやすいため、話しかけたり、おいしいね~といいながら、家族で食卓を囲んでほしいと思います。
ただ、言うは易しという現実もありますよね。わが家も上の子が4歳になり、食事中も食事以外のことに関心が向きやすい時期であるため、ますます食卓の演出が大切になってきました。「ちゃんと座って食べなさい」と小言も言いつつ、「今日は幼稚園でなにして遊んだの?」と楽しい話を決まって聞いて、家なのにあえて完食しやすいお弁当にしたり、料理が映える鮮やかな食器やかぼちゃ型のウッドボードを敷いたりして、ますます"楽しい食卓"の演出を考えています。食べる内容が体の大きさに如実に反映されるので、調理家電やデリキットを使って手を抜きつつ、気は抜かずに"美味しく楽しく"を実践できたらと思っています。

※1「Lozoff et al. Arch Pediatr Adolesc Med. 2006:160(11);1108-1113.」

※2「Tamura T, Goldenberg RL, Hou J, et al. Cord serum ferri- tin concentrations and mental and psychomotor develop- ment of children at five years of age. J Pediatr 2002; 140:165-170.」

プロフィール 細川モモ

  • 予防医療コンサルタント
  • 社団法人ラブテリ トーキョー&ニューヨーク代表理事
  • 2011~2015 ミス・ユニバース・ジャパン オフィシャル
    トレーナー

両親のガン闘病をきっかけに予防医学に関心をもち、米国にて栄養疫学に出会う。米国認定資格を取得後、09年に日米の専門家を集めて母子健康増進プロジェクト「ラブテリ トーキョー&ニューヨーク」を発足。「卵巣年齢共同研究PJ」他、共同研究を複数を手がける。14年に三菱地所(株)とともに働く女性のための「まるのうち保健室」をオープンし「働き女子1,000名白書」を発表。自身の出産/子育て経験を機に産後のお母さんと子どもの健康をサポートするプロジェクトを立ち上げ、4桁の母子の健康状態をまとめた「こどもすくよか調査」を発表。著書「成功する子は食べ物が9割」が10万部突破、続編の「成功する子は食べ物が9割 最強レシピ」 (主婦の友社)も好評発売中。母子の栄養改善への取り組みが人気育児雑誌が選ぶ〈ペアレンティング・アワード2018〉他、複数のアワードを受賞。

著書紹介

成功する子は食べ物が9割

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成功する子は食べ物が9割 最強レシピ

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