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STORY01

STAN.にまつわる言葉たち。vol.1 STANDBY

STAN.って、ちょっと不思議な製品だと思います。

特別に派手なわけではなく、特別に高機能なわけではなく、特別に安いわけでもない。

それなのに、多くのお客様に支持され、愛用されている。

どうやらSTAN.には、従来製品とは
少し異なる「魅力」があるようです。

なぜ、「特別」ではないSTAN.が、
ここまで愛されているのか?

答えは様々でしょうし、もしかすると、正解はないのかもしれません。でも、それを知ろうとすることは、決して無駄ではないと思います。

この連載は、STAN.に関わった人々の言葉をまとめたものです。

STAN.にまつわる言葉を通じて、STAN.の魅力と、「その魅力が生み出された理由」を探求していきます。

STAN.の3つのキーワード

1 STANDBY あなたの暮らしにスタンバイ。2 STANDARDスタンダードをつくり続ける。3 STANCEそれが象印のスタンスです。

まずはじめに、「STAN.」という名前の由来にもなった3つのキーワードをご存知でしょうか。

これらを掘り下げることは、すなわち、STAN.を深く理解することに繋がるはずです。

今回は、STANDBY「暮らしにスタンバイすること」をテーマに、象印マホービン株式会社デザイン室の方と、STAN.シリーズのプロダクトデザインを担当されたクリエイティブユニットTENTさんのインタビューを通して、

暮らしになじむ製品として、多くのお客様にご愛用いただいている理由を紐解いていきます。

インタビュアー:渡辺平日
イラスト:星野ちいこ
編集:『STAN.にまつわる言葉たち。』編集部

INTERVIEW
01

次の時代を担う若い世代のために

デザイン室 室長ほりもと みつのり堀本光則

もともと象印の創業100周年(2018年)記念的な製品を作る予定はなかったんですが、なんとなく機運が高まってきたんですよ。

その流れを受けてか、うちのトップ(市川典男社長)から「デザインを重視したシリーズをつくれないか?」と打診がありまして。それで急きょ、企画やデザインのメンバーを招集してミーティングを開催することになったんです。

その時点では、具体的なテーマはほとんど決まってなかったですね。決まってたのは、過去2004年から2011年まで販売していた「ZUTTO」というブランドのようにデザインを重視して、あとは、シリーズでやろうということぐらいで。

--ターゲットはどういうふうに決まっていったのでしょうか?

ちょうどそのとき、平成が終わるタイミングだったんですね。時代が変わるということもあって、「次の時代を担う若い世代に向けた家電シリーズはどうか?」と、当時の企画統括から提案がありまして。それをコンセプトに据えることにしたんです。

デザイン先行でやろう

--プロジェクトは全体的に順調に進んでいったのでしょうか?

いや、最初はぜんぜん遅かったですね。プロジェクトが立ち上がって、メンバーと何度もディスカッションしたんですけど、アイテム選定とかそういうことがなかなか決まらなかったんです。炊飯ジャーをやることはわりと早い段階で決まってましたけど。

それで、「今回はデザインを先行させて進めていくのはどうか?」と、従来とは異なる方法を検討するようになったんです。先にイメージをつくって、スケッチを描いて、進めようと。もともと「デザイン重視のものを」と指示も受けてましたし。

それでTENTさんを含め、複数のデザイン事務所からコンペのような形でアイデアを募って、検討していって。方針を変えたおかげで、アイテム選定は目に見えてはかどるようになりました。プロジェクト全体でいうと、そこからが長かったんですけどね。

象印は「うつわ(器)」からはじまった

-いろいろな候補があったなかで、うつわ案を採用することになりました。決め手はなんだったのでしょうか?

デザイン室メンバーの反応がよかったのが大きかったですね。あとはやっぱり「うつわ」というキーワードがよかったです。

象印は魔法瓶、つまり、ガラスの「うつわ」からはじまった会社なんです。原点に戻るという意味でも、うつわ案はいいんじゃないかなと。
実は、もうひとつ有力な候補があったんですね。そっちは(うつわ案とは)方向性が違っていたこともあり、なかなか絞りきれませんでした。

もともとは社長発信のプロジェクトだったので、市川社長に意見を求めることになりました。イメージスケッチを見比べていただいて、最終的に「うつわ案で進めよう」ということになったんです。

象印らしさ

STAN.をきっかけに、象印マークが再認識されたというか、見直されたことが嬉しかったです。ある意味では、このプロジェクトの一番の成果と言っても過言じゃないと思ってます。

なぜ嬉しかったかというと、このマークには優しさとか安心感とか、そういう「象印らしさ」が凝縮されてるからなんですよ。

普段から「象マーク、かわいいよね」という声を聞くことがたまにあって、「素敵なシンボルマークを持ってるのに活用しないのはもったいないな」と思うようになったんです。

INTERVIEW
02

暮らしになじむために研ぎ澄ます

クリエイティブユニットTENT

デザイナーって、よく「わがままを通してこそ一人前」みたいに言われることもあります。でも僕たちは、最初のデザインスケッチが必ずしも究極のものだとは思っていなくて、けっこうあっさりと考えを変えることもあるんです。

たとえば、CGの段階ではいいと思っても、実物大の試作品を部屋に置いてみると、ディテールが大げさに感じたり、触ってみたら使いにくかったりとか、そういうことはよくあります。あるいは、製品化のために、設計を変更することも多々ありますね。

そんなときは大事なコアの部分、つまり「暮らしになじむ」ためになにをすべきかを何度も確認します。変えるべきところは大胆に変える。そうすることで、デザインはより研ぎ澄まされていくと、僕たちは考えています。

家族みんなで親しみをもって使える

今回のシリーズはいわゆる「スタイリッシュさ」を狙ったものではなくって。「家族みんなで親しみをもって使えるもの」にしたいというゴールイメージがありました。

それに加えてやはり、お爺さんやお婆さんも含んだ3世帯家族でも安心して使えることも理想としてはありましたね。

幅広い世代が使うものだから、わかりやすい文字の大きさ、見やすいボタンの色などは、長い歴史の中で培われた象印さんの家電のルールに準拠すべきと考えたんです。

インテリアとなじませる工夫

STAN.がインテリアとなじむよう、いろいろな工夫を施しています。

たとえば炊飯ジャーですと、操作ボタンや機能表記を天面に集約し、その面を周辺より一段へこませています。この工夫によって、離れた場所からは操作部が目に入りにくくなっているんです。

そのまま出しておいても嫌じゃない

炊飯ジャーとか電動ポット、ホットプレートとかって、僕らが子どものころから親しんできたものですよね。あくまで個人的な意見ですが、それらには「最先端」とか「きらびやかさ」みたいな要素は、そこまで必要ないと考えています。それよりも、もっと必要な要素があるんじゃないかと。
たとえば、フライパンや木べらのような「道具」らしいものって、キッチンにそのまま出しておいても嫌じゃないですよね。そういう「道具らしい家電」をつくりたいと思ったのが、STAN.を着想したきっかけなんですよ。

INTERVIEW
03

STAN.の場合は一度も比べなかった

デザイン室 デザイナーえんどう まみ遠藤麻美

--STAN.を開発していくにあたり、競合他社の製品との比較などは行いましたか?

たぶん一度もないと思います。他の製品だとだいたいは比較するんですよ。店頭に並んでいるときにどう見えるかとか、そういうことを念入りにチェックしますね。でも、STAN.の場合は一度も比べなかったです。ただ、サイズ感だけは気にしていました。過去の自社製品と比べてみて、「うん。だいたい同じ大きさだから大丈夫だな」みたいな感じで。比較したのはそれぐらいですね。

「こういう方向性もいい」という提案

デザインをシンプルにしようとすると、いろいろな要素を削ぎ落とす必要があるので、高級感を出すのは難しいんですね。だから、象印の価格帯的には、「シンプルで洗練されたデザイン」よりも、「高級感を強調したデザイン」や「店頭で目立つようなデザイン」が優先されることが多かったんです。
一方、今回のプロジェクトでは、「101年目へ向けて挑戦しよう」という雰囲気も味方してくれて、これまでとは違うことができました。社内の慣例に対して、「こういう方向性もいいと思う」と提案できたのは、とても意味のあることだと思います。

あたりまえだけど、あたりまえじゃないこと

お湯がすぐ沸くとか、(タンブラーに入れた)飲み物がずっと温かいとか、そういう「あたりまえだけど、あたりまえじゃないこと」をきちんと提供できている。それが象印というメーカーだと思います。

「ふつう」をつくっている

炊飯ジャーや加湿器みたいに、毎日使うものってブランドが気になると思うんですけど、うちの製品はそのあたりはあまり重視されてない気がします。「これ、象印だったんだ」という感じで、気がついたら家にあるみたいな。
そんなふうに目立ちはしないんだけど、いつの間にか暮らしに溶け込んでいって、いつもの日常を支えている。 そういう意味で、象印は「ふつう」をつくっているメーカーなんだなと感じます。

INTERVIEW
04

すべては安心して使っていただくために

デザイン室 デザイナーないとう あやか内藤彩佳

製品開発に対して厳しい条件や基準を設けているのは、もちろんイジワルでやっているわけではなく、すべてはお客様に安心して使っていただくためですよね。

設計的な観点と、デザイン的な観点がバッティングすることもあって苦労しますが、安心のためにはそのあたりは絶対に妥協できないと、最近になってますますそう感じるようになりました。

配膳という動作に着目した設計

実は「TENT さんに依頼してみてはどうでしょうか?」と提案したのは私だったんです。入社してまだ間もない時期に、デザイン室長の堀本さんから「こういうプロジェクトがあるんだけど、いいデザイナーさんいない?」って聞かれまして。そのときにTENT さんの名前がフッと浮かんだんですよ。

その2 週間後くらいに「打ち合わせするから(TENT の事務所がある)中目黒へ行くよ」って突然言われて、そのあまりの展開の早さに驚きました。

--それは非常にスピーディーですね。その後、TENTさんのプレゼンテーションにも参加したとき、どんなことを感じられましたか?
TENTさんに打診するきっかけになった手前、私までめちゃくちゃ緊張したのを覚えています(笑)

-- それは緊張しますよね(笑)。ちなみに、うつわ案を見たときは、どう思われましたか?

配膳という動作に着目した設計が素敵だなと思いました。ただ、あまりにも新しいデザインだったので、「企画のままで終わってしまうかもしれない」と心配しました。これも緊張した原因ですね。

INTERVIEW
05

みんなが「使う人のこと」を考えている

デザイン室 デザイナーやまもと さや山本紗弥

長く仕事をしていると、製造や販売する上での問題ばかりに、どうしても目が行きがちだと思うんです。でもSTAN.に関しては、デザインする人や設計する人、魅力を伝える人、商品を届ける人、みんなが「使う人のこと」を考えている。それが象印なのかなと思います。

きれいで、シンプルで、率直に「いいな」と思った

--TENTさんのプレゼンテーションに参加したとき、どんなことを感じられましたか?

当時、私は入社2年目で、外部のデザイナーさんの提案を見る機会ってそんなになかったんです。だからプレゼンテーション自体がとても新鮮に感じましたね。

--うつわ案をはじめてご覧になったとき、どう感じられましたか?

きれいで、シンプルで、率直に「いいな」と思いました。たしか他の案もあったはずなんですけど、これ以外は記憶になかったです。
--(笑)。それぐらいうつわ案が素敵だったということでしょうか?

そうですね(笑)。それと、いつもだったら商品ごとに異なる部署で開発していくところを、シリーズとして同時に開発していけると聞いて、とってもワクワクしました。

実際のお客さまの声

STAN.を実際にご愛用いただいているお客様の声を、住まいとインテリアの写真投稿サービス「RoomClip」から集めました。

Vol.1 まとめSTANDBYあなたの暮らしにスタンバイ。とはノイズがないこと、調和すること。

「あなたの暮らしにスタンバイ」することとは、「ノイズがなく、調和すること」と言い換えられるかもしれない。インタビューを終えた後、僕たちはそんな想いを深めました。

それから、こう考えました。「あなたの暮らしにスタンバイ」するためには、自らの「生活」をしっかりと見つめ直すことが大切なのかもしれない、と。

自分と、自分の身近な人たちが、ほんとうに必要としているものはなにか?心から使いたいと思うものはなにか? そんな難題に、何度も何度も向き合うことで生まれたもの。それこそがSTAN.なのではないでしょうか。

さてさて。STAN.の不思議に迫る旅は、
まだ、はじまったばかりです。

次回は STANDARD スタンダードをつくり続ける。

について、お話を伺っていきたいと思います。

STAN.にまつわる言葉たち。』編集部