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STORY04

STAN.にまつわる言葉たち。vol.4 これからのSTAN.

STAN.って、ちょっと不思議な製品だと思います。

特別に派手なわけではなく、特別に高機能なわけではなく、特別に安いわけでもない。

それなのに、多くのお客様に支持され、愛用されている。

どうやらSTAN.には、従来製品とは
少し異なる「魅力」があるようです。

なぜ、「特別」ではないSTAN.が、
ここまで愛されているのか?

答えは様々でしょうし、もしかすると、正解はないのかもしれません。でも、それを知ろうとすることは、決して無駄ではないと思います。

この連載は、STAN.に関わった人々の言葉をまとめたものです。

STAN.にまつわる言葉を通じて、STAN.の魅力と、「その魅力が生み出された理由」を探求していきます。

STAN.の3つのキーワード

1 STANDBY あなたの暮らしにスタンバイ。2 STANDARDスタンダードをつくり続ける。3 STANCEそれが象印のスタンスです。

STAN.」という名前の由来になった3つのキーワード。

STANDBY
STANDARDSTANCE

これらの言葉を中心に据え、たくさんのお話を聞く中でSTAN.が生まれた背景が浮かび上がってきました。

今回は「これからのSTAN.のこと」をテーマに、多くのお客様に支持されているこのシリーズが、これからどんなふうに展開していくのかを、代表取締役 社長執行役員 市川典男さんにお話を伺い、紐解いていきます。

インタビュアー:渡辺平日
イラスト:星野ちいこ
編集:『STAN.にまつわる言葉たち。』編集部

INTERVIEW
01

新しさとルーツとのリンク

代表取締役 社長執行役員いちかわ のりお市川典男

--新しい家電シリーズのデザインは、複数のパートナー会社から募集し、選定していったと伺いました。

そうですね。私は最終候補の2案をプレビューしました。TENTさんの案と別に、もうひとつ案があったのですが、どちらもいいデザインでしたね。シンプルで、本質的で。

--決め手はなんだったのでしょうか?

不採用になった案は、これまでの象印の家電を「より良く」したものでした。もし(新シリーズを)一般商品として打ち出すのであれば、こちらの案が採用されていたかもしれません。

TENTさんのデザインは、従来の象印にはなかったもので、新しさを感じましたね。その一方で、設計などを細かく見ていくと、弊社のルーツとリンクする部分もあり、新鮮ながらも象印らしさがあるなと思いました。

甲乙つけがたいものがありましたが、私たちは「創業101年目に向けた新しい製品をつくる」というミッションに取り組んでいましたから、そういう意味ではTENTさんの案のほうが今回の目的の上ではふさわしいという結論に至りました。

「象印らしくないのに、象印らしい」。一言で言うと、これが決め手です。

昔の食卓の風景が脳裏によぎった

--STAN.をはじめてご覧になったとき、どんな感想を抱かれましたか?

「これは炊飯ジャーというより、お櫃(おひつ)のようだな」と思いました。なんというか、どこか懐かしい感じがしましたね。昔の食卓の様子とか、そういう風景が脳裏によぎったりして。
「うつわをベースにしている」というコンセプトを聞いて、なるほどと納得しました。というのも、我々の会社にとって、ごはんを保温しておくための「うつわ」とは、お櫃のことなんですよ。だから、新しいデザインなのに、スッと入ってきたんでしょうね。

会社の成長とコラボレーション

今回のインタビューにあたって、象印が過去に発売していた「シリーズもの」を振り返っているときに、おもしろい発見がありましてね。

STAN.のひとつ前が、柴田文江さんのZUTTOシリーズ。さらにさかのぼって、マリオ・ベリーニさんとのコラボレーション、ピエール・カルダンさんとのコラボレーション。そして花柄シリーズと、これまでにいろいろなデザイン・コンシャスなプロダクトを発売してきました。

象印の歴史と照らし合わせてみると、そういうデザインを軸にした製品を打ち出す時期と、会社が成長した時期が、けっこう重なってたんですよ。どうやら象印は、一皮むけて成長しようとするタイミングで、なにか思い切ったことを行う傾向にあるようです。

頻繁にアップグレードする必要はない

昔から思っていることですが、家電製品は、そんなに頻繁にアップグレードする必要はないと考えています。人の生活は、1年やそこらで大きく変わるわけではありませんしね。ここ数年はコロナ禍で特別として、「去年はこうだったけど、今年はこうなった」ということは、ほとんどないと思います。
しかし、5年10年と、長い目で考えると、やはり生活は変わっていきますよね。ですから、常に中長期的な視点を持って、お客様に「ライフスタイル」を提案していくことが大事だと思っています。

安心して使えるという前提

--もしご友人などにSTAN.の魅力を伝えるとしたら、どのように説明しますか?

うーん。「いいと思わない?」という感じでしょうか。それで相手が「いいね」と言ったら、「うん。いいだろう」と(笑)

他の製品でしたら、まずは機能の説明からすると思います。「火力がすごくてね」とか、「こういう特殊な炊き方をしててね」とか、そういうふうに。でも、STAN.の場合はまず、視覚的な部分からアピールしたいですね。

もちろん見た目だけじゃないですよ。しっかり安全基準などにも配慮しています。「安心して使える」という前提がなければ、どれだけデザインがよくても意味がありませんから。

自分たちが「いい」と信じられるものを

--今後、STAN.に携わっていく社員やパートナーに、なにかメッセージをお願いできますでしょうか。

自分たちが好きになれるものを、自分たちが「いい」と信じられるものを、これからも追求してほしいです。

もし方向性に迷ったら、まずは自分たちで考えてみてと言いますね。答えはきっと、自分たちの中にあるはずですから。

--今もし、市川重幸 元会長がSTAN.をご覧になられたら、なんとおっしゃられると思いますか?

うちの親父は褒めてくれるんじゃないかな。「ええもんつくったな」と。おそらくデザイン性も気にいるでしょうし、コンセプトにも納得してくれるでしょうね。少なくとも「ずいぶん冒険したな」とは言わないと思います(笑)

Vol.3 まとめSTANCE 象印のスタンスとは素直であること、深く伝えること

「あなたの暮らしにスタンバイ」することとは、「ノイズがなく、調和すること」。そのためには自らの「生活」をしっかりと見つめ直すことが大切なのかもしれない。

「スタンダードを作り続ける」とは「わかりやすくて納得できるものをつくること」。そのためにはほんとうに必要な機能を見定めた上で、これまでに培ってきた歴史の「蓄積」を生かすことが大切なのかもしれない。

「象印のスタンス」とは「素直であること深く伝えること」。そのためにはイメージを共有した上で、時間をかけてじっくり伝えていくことが大切なのかもしれない。

たくさんの言葉から、STAN.が持つ「価値」と、その価値を生み出した理由に、しっかりした輪郭が現れてきました。

これからのSTAN.がどうなっていくべきかを考えるとき、過去の「らしさ」に囚われすぎず、自分たちの生活にしっかり立ち返り、自分たちが納得して使いたいと思え

るものは何か。そんな問いと真摯に向き合い続けることが、STAN.の「価値」の源泉なのではないでしょうか。

これからのSTAN.がどうなっていくべきかを考えるとき、過去の「らしさ」に囚われすぎず、自分たちの生活にしっかり立ち返り、自分たちが納得して使いたいと思えるものは何か。そんな問いと真摯に向き合い続けることが、STAN.の「価値」の源泉なのではないでしょうか。

「日常生活発想」。
STAN.をめぐる旅の先には、この言葉が思い浮かびます。

象印にとっても、STAN.にとっても大切なこの言葉を胸に秘めて、日常生活をよりよくするために、 私たちは、STAN.と象印のこれからをつくり続けてほしい、と願っています。

STAN.にまつわる言葉たち。』編集部