象印 ZOJIRUSHI

あらゆるご自宅の寝室に、しっかり行き届く心地よさを。

ふとん乾燥機「スマートドライ」

設計開発担当 / 米原 真輔(左) 
商品企画担当 / 柳原 浩貴(右)

2012年、象印は業界で初めて、マットもホースもないふとん乾燥機を発売。それまで「あって当たり前」だった組み立ての手間をなくした新製品は、その使いやすさから注目の的に。市場を大きく広げ、人々の生活スタイルそのものを変化させました。そしていま、ふとん乾燥機は「マットがなくて当たり前」の時代に。人々の新たなニーズに耳を澄ませながら次の進化をめざす、企画・開発メンバーからの声をお届けします。

ふとん乾燥機において、マットとホースを使用しない方式。(2012年11月1日発売時点 当社調べ)

STORY.

この心地よさを、より多くの方に

ふかふかのふとんって、本当に気持ちがいいものです。一度味わってしまうと、もうやめられなくなるぐらい。だからこそ、毎日気軽に使っていただけるように、細部まで気配りの行き届いた製品をつくろうと思いました。
象印がマットやホースをなくしたことで、ふとん乾燥機はより扱いやすく、身近な存在となりました。そしていま、「マットなし」が当たり前となった時代に、どうすればより多くの方に製品を使っていただけるのか。じっくりとお客さまを見つめることで、まだ明らかになっていないニーズを見つけたい。そのために、お客さまのリアルな生活実感をつかむ調査やインタビューを行うことにしました。

隠れていた不安・ニーズを発見!

会場調査では、自社だけでなく他社のふとん乾燥機までずらりと用意。集まっていただいたモニターの方々に「いつもどおりに使って、片付けてみてください」とお願いして、その様子を目の前で見させてもらいました。すると、基本的な使い方は決まっているはずなのに、皆さんの行動はまさに千差万別。その行動のひとつひとつに、無意識の不安がはっきりと映し出されていたんです。
ひとつめは、「温風がふとんの隅々まで本当に届いているか」という不安。運転中、ノズルを差す位置をあちこちに移動させたり、ふとんの端に何度も手を入れたり。しっかり仕上げたいという思いが伝わってきました。ふたつめの不安は、もともとパーツが少ない象印には強みとなりますが、「毎日使ってホースなどが劣化しないか」という耐久性に対するものでした。

▲ 毎日使いたくなる、毎日使ってしまうふとん乾燥機を目指して

めざすは「目に見える」風量アップ

「いまある不安を払拭できたら、皆さんがもっと安心して、毎日ふとん乾燥機を使えるようになる」。そんな予感を抱き、いよいよ新製品の構想を具体化。なかでも重視したのは、マットやホースがない不安感をとりはらうため、「目に見えてふとんに温風が届くようにする」ことです。確証を得るためにインタビュー調査をしたところ、「ふとんが温風でふくらむ状態」が「ちゃんと乾燥できている安心」に結びつくと判明。開発のメインテーマが「風量アップ」に決まりました。
ただし、すでに2つのファンを搭載し、たっぷりの風量を実現している製品。さらにパワーアップをめざすのは至難の技でした。単純にファンを大きくすれば風量は増えますが、コンパクトさもゆずれません。あらゆる構造を徹底的に見直した結果、ノズル根元にある風の通り道を、曲がらずまっすぐ通るように改良。なんと風量が格段にアップし、乾燥スピードやダブルサイズへの対応力も向上させられました。

  • ▲ ツインファンの風を効率よく伝える構造とノズルの進化で風量アップを実現

  • ▲ ふとんの温めイメージ

使うシーンにあった心づかいを

今回の開発にあたり、お客さまがどんな状況で使われるかを、できるだけ細やかにイメージしました。たとえば、製品が置かれるのは主に寝室なので、同じく寝室で使われることの多い加湿器のデザインを参考に。シンプルながらも、やわらかい雰囲気・質感をめざしました。また、ノズルを動かすカチャカチャ音もできるだけ軽やかに。おやすみ前にさっと、そっと使えるように配慮しました。
当然のことですが、可燃性の高い寝具や衣類のそばで使うものなので、安全性には十分すぎるほどの配慮を。本体に熱がこもらないためのセンサーや、あやまって踏んでも壊れにくいノズルの強度など、安心して使いつづけていただける品質を備えています。

デザインにも嬉しい反応が

約1年半の開発を経て、ついに発売される瞬間が。さまざまな製品を手がけてきましたが、SNSやレビューでご購入者の評価を読むときは、いつも期待と怖さでドキドキします。この製品では、「ふとんのふくらみでパワフルさを実感できた」という狙いどおりの声や、ちょっと予想外でしたが、製品のフォルムや機構が有名なアニメのモビルスーツに似ているというレビューもありました。
たとえば、ノズルのゆるやかなカーブは、ふとんが吹き出し口に密着しすぎないため。ひとつひとつの形状には、ちゃんと理由が備わっています。なので、機能美を持つメカに例えられるのは、ありがたいことです。カラーリングも、従来のホワイトに加えて、落ち着いた寝室に似合うグレーを用意。新しいターゲット層に選ばれることをめざしました。

  • ▲ ホワイトとグレーの2色展開(2020年発売のRF-FA)

  • ▲ 吹出口の角度を調整し、衣類や靴などの乾燥にも

だれもが使わずにいられない製品へ

あくまで個人的な考えですが、いい生活家電というものは、「作り手が商品の特長としてアピールすること」「お客さまが商品に期待すること」「実際に使ったお客さまが実感できること」の3つが一致しているべきだと思っています。毎日使える手軽さと安心、そして何よりも、毎日使わずにはいられない心地よさを追求した私たちの製品が、皆さんの日常にぴったりハマりますように。そして、いまはまだ全体の4割ほどの「ふとん乾燥機を使っているご家庭」が、どんどん増えていくような製品を、今後もつくっていきたいです。

SECRET STORY.

象印ものづくりの
「ここだけの話」

柳原 浩貴

「できるだけムダをなくして、ニーズに応えるものをカタチにする。とくに生活家電を担当していると、そんな質実剛健さがいいなと感じます」

柳原 浩貴/商品企画担当

米原 真輔

「極端に言えば“バカ正直”というか…たとえ手間やコストがかかっても、安全性と使いやすさに妥協しない。それも質実剛健のひとつでしょうね」

米原 真輔/設計開発担当

所属部署・内容は取材当時(2021年10月)のものです。