象印 ZOJIRUSHI

洗いやすく、使いやすい。みんなの声で生まれました。

「シームレスせん」

設計開発担当 / 森本 慎也(左) 
商品企画担当 / 森嶋 孝祐(右)

「マイボトル」という新しいライフスタイルの普及に、一役買ったのが象印のステンレスボトル。毎日清潔に使っていただくために、「せんを分解してきれいに洗える」ことを重視していました。けれど、それから10年が経ち、いつの間にか世の中のニーズが変化。「いま本当に、お客さまが求めていることは何だろう?」。そんな原点に立ち返り、徹底したヒアリングを実施。せんとパッキンが一体になった業界初の「シームレスせん」を生みだした、企画・開発メンバーの声をお届けします。

ステンレスボトルにおいて、せんとパッキンをひとつにしたせん構造の技術。(2020年7月30日発表による 当社調べ)

STORY.

過去のヒットより、いまのニーズ

「このままでは、まずいかも」という予感はありました。ライバルが多いステンレスボトル市場で、お客さまに選んでもらえるよう、目新しさを詰め込んだ製品を発売。なのに、売り上げが伸び悩んでいるのは、決定的に何かが足りないからだと。その何かというのが、かつて大ヒットした製品とは違うお客様のニーズがポイントでした。
従来製品も、お客さまが使いやすい商品づくりを常に目指しており、象印ならではの高い技術と安心への配慮が凝縮されたものでした。ただ、世の中のニーズは、自分たちが思っている以上の速さで変化しています。たくさんの人に選ばれ、その日常に寄りそうものであってこそ、象印の製品。次につくるものは必ず、みんなに「使いやすい」「使いたい」と思われるようにしなければと考えました。

答えは、お客さまのなかに

お客さまの気持ちを確かめるべく、大規模アンケートや対面インタビューなど、さまざまなスタイルの調査を実施。対面調査では100人以上のお客さまに、ずらりと並んだステンレスボトルのなかから「欲しい」と思うものを手にとってもらい、「なぜ選んだのか」を伺いました。すると必ず返ってきたのが、「使いやすそう」「洗いやすそう」「シンプル」という3つの言葉。そこに既存の象印製品が当てはまりづらいことも、明らかになりました。
使いにくい、洗いにくい、シンプルじゃないのはどこだろう? より具体的な回答を得られるよう、「パッキン」に焦点をあてて再度、質問。すると、「ボトル全体」では聞かれなかった不満が、出るわ、出るわ。「これを解決できれば、みんなの欲しいものがつくれる!」。これはもう、やるしかない、という気持ちになりました。

異素材の「せん」と「パッキン」をひとつに

「使いやすい、洗いやすい、シンプルにつくってほしい」。ユーザーの意見を率直に伝えると、開発スタッフもすぐに納得してくれました。では、どうすれば、その声に応えられるか。チームのみんなで考えられる最良の策をカタチにしたものが、分解いらずの「シームレスせん」となったのです。
もちろん、簡単にできたわけではありません。なんといっても最大の難所は、「せん」となる樹脂部分と、「パッキン」となるゴム部分を、すき間なく「一体化」させること。それぞれの素材を扱う専門業者に問い合わせたところ、どちらからも「素材が違うからムリ」という答えが返ってきました。けれど、「できない」では終われません。数えきれないトライ&エラーを重ね、ついに「せんとパッキンの一体化」を実現。「分解して洗える」ではなく、「分解しなくても洗える」、いまの時代が求めるステンレスボトルを完成させたのです。

安心があるから、飛躍できる

あまりにもシンプルなつくりなので、モニターテストでは「本当に漏れないの?」という声もあがりました。もちろん、漏れません。それが象印の品質だからです。ゴム部分の形状や硬さなどを細かく検証し、「こんなことありえない」というほど過酷な状況でのテストを繰り返し、長く安心して使ってもらえるものに仕上げる。そんな品質の証しが、本体の真ん中についた“象のマーク”なのです。
新しい技術には違いないけれど、もし「シームレスせん」だけなら、アイデア一発の製品で終わってしまうでしょう。長年の真面目な姿勢で培われた品質がベースにある上で、お客さまのニーズを丁寧にとらえた画期的な構造が搭載されたからこそ、多くの方がスムーズに受け入れてくださったのだと思います。

大きな反響、仲間もぞくぞく

「これは売れる」と、開発がすすむにつれて、みんなが確信。実際に、予想を上回る反響があったのは嬉しかったです。「シームレスせん」を搭載した第一号の製品は、スクリュータイプのステンレスマグでしたが、その後、ワンタッチオープンタイプも登場。さらにハンドルタイプやフリップオープンタイプのステンレス キャリータンブラーなど、「シームレスせん」搭載の製品も加わりました。
ハンドルやフリップオープンは、ボトルではなくタンブラー型です。「“気持ちよく使える飲みものの容器”ってなんだろう?」。そんな問いを突き詰めると、このかたちになりました。ハンドル付きのせんや、ふたとパッキンの一体化など、技術的にいっそう難しいチャレンジの連続でしたが、その甲斐あって、漏れずに持ち運べる、新感覚の「キャリータンブラー」ができあがりました。

  • ▲ 2021年9月に発売された「ステンレス キャリータンブラー」

  • ▲ ちょっとした移動にも便利

だれかの不満に、しあわせな答えを

ちょっと飛躍した例えですが、「どんなものをつくりたい?」と聞かれたら、「洗濯機のようなもの」と答えます。初めて世の中に洗濯機が現れたことで、それまで日々の洗濯に費やしていた労力や時間を、いろいろなことに使えるようになりました。当たり前だと思われていた不満を減らし、気持ちのいい時間を増やす。そんなものづくりができたら、というのが願いです。
今回のステンレスマグやキャリータンブラーも、お手入れが手間だ、という不満から生まれました。みんなの不満を減らすことで、マイボトルを使いたいシーンが増えて、ペットボトル等の容器ゴミを減らせるのなら、こんなにいいことはありません。そんな風に、だれかの不満をいいことに変えていけるよう、これからもお客さまのニーズを見つめていきたいです。

SECRET STORY.

象印ものづくりの
「ここだけの話」

森嶋 孝祐

「100年培ってきた技術をもとに、
お客さまに安心して使ってもらえる、
より良いものづくりを極めていきたいです」

森本 慎也/設計開発担当

森本 慎也

「その“品質”という土台があるからこそ、
僕らも思いきって新しい製品アイデアを生みだせるんです」

森嶋 孝祐/商品企画担当

所属部署・内容は取材当時(2021年10月)のものです。