ZOJIRUSHI

温度を操る象印ならではのオーブンレンジ、できました。

「オーブンレンジEVERINO”」

設計開発担当 / 石井 琢也(左) 
商品企画担当 / 稗田 雅則(右)

2022年秋、象印初となる自社開発のオーブンレンジ“EVERINO(エブリノ)”が発売されます。「本当に使ってもらえるレンジ」を合言葉に、使いたくなる便利な機能を、わかりやすく、使いやすいスタイルで搭載。既成の機能にとらわれず、象印ならではの生活者目線による新しい発想をカタチにした、初めてづくしの開発舞台裏を、企画・開発メンバーの声でお届けします。

STORY.

つくらないの?と皆が期待

「いつか、つくるんだろう」と社内外で思われてきた、象印のオーブンレンジ。いよいよ開発すると聞いても、それほどの驚きはありませんでした。そもそも象印には、炊飯ジャーやトースター、ホットプレートなどの商品で培ってきた「温度コントロール」や「調理プログラム」の技術があります。そのすべてを今回のオーブンレンジ開発に生かせるよう、それぞれの商品に精通したメンバーが集結。新たに立ち上げられた部署で、象印では初めてのオーブンレンジ開発がスタートしました。
最初の立ち上げメンバーは6名。他部署に比べると小規模でしたが、そのぶん、ひとつひとつの課題に対して全員で活発に意見を交換し、アイデアを広げることができました。

▲ 既存商品で培ってきた「温度コントロール」や「調理プログラム」の技術を活用

わが家の本音がコンセプトに

開発の初期段階で最も悩んだのは、核となる商品コンセプトです。先発メーカーが多い市場だけに、すでにある機能や技術を追いかけるだけでは、象印が独自に開発する意味がありません。考え尽くされているように見えても、きっとまだ、ユーザーのニーズに応えきれていない何かがあるはず。その答えは、象印らしい“日常の発想”から出てきました。
きっかけは、開発メンバーの家庭での何気ないやりとり。長年、自宅で使っているオーブンレンジについて奥さんに聞いてみると、期待して購入したはずの機能をほとんど使っていないというのです。「使わない機能はいらない」「本当に使ってもらえる機能だけを搭載しよう」。これが、私たちをゴールに導く道しるべになりました。

レンジとグリルの合わせ技「レジグリ」「サクレジ」

方針は決まったものの、“本当に使ってもらえる”機能とは何か、まだまだ具体的アイデアにはつながりません。そこで、あえて気軽なスタイルで、社内のディスカッションを実施。いったん作り手としての立場を忘れ、アイデア会議をひらき、いまのオーブンレンジに対する不満を挙げることにしました。
すると数名から、「オーブンで本格調理したいのに、ハンバーグがうまく焼けない」という意見が。芯まで火が通るのが遅く、時間をかけるとパサパサになるのです。そこで考えたのが、芯の温度を上げる“レンジ”から、表面を焼いてうまみを閉じ込める“グリル”へ自動で切り換わる「レジグリ」機能。ハンバーグなら約13分という短い時間で本格的な仕上がりに。同じ考え方で、揚げ物をサクッと温める「サクレジ」機能も開発。通常はレンジに使えないグリル用の鉄板をセラミック製(陶磁器)のプレートにすることで、調理時間を短縮し、おいしく仕上げることができるようになりました。
※下ごしらえの時間は含みません。食材の種類、形、量、大きさや使用環境などによってできあがりが変わります。

  • ▲ 「レジグリ」なら短時間で本格的な仕上がりに

  • ▲ マイクロ波を透過するセラミック製の角皿

「うきレジ」のためにボウルも開発

社内ディスカッションは、まだまだつづきます。もうひとつ、「温度ムラがある」の声にも、皆が強くうなずきました。ボウルひとつで手軽に煮物等をつくれるはずが、底の方ばかり煮えてうまく仕上がらないというのです。そこで大胆に発想を切り替え、ボウルを底に置かず“浮かせて”調理。全方向から食材を温めて、温度ムラを防ぐことに。これが、新発想となる「うきレジ」機能です。
ちなみに、商品に付属するボウルは、「うきレジ」用に開発したオリジナル品。付加価値として認めてもらえるよう、品質や耐久性にこだわりました。新しいアイデア満載のオーブンレンジですが、性能や安全面については、あらゆる象印製品と同様に厳しくチェックしています。
※国内家庭用電子レンジとして、食材を浮かせて温める技術を搭載。(2022年7月27日発表による 当社調べ)

  • ▲ 角皿下部のレールにボウルを差し込む

  • ▲ ボウルを浮かせて全方向から温め、温度ムラを防ぐ

すべては、使ってもらうために

「レジグリ」や「サクレジ」、そして「うきレジ」も、いま市場にある商品の常識に捉われていては、出てこなかった革新的なアイデアです。ただ、私たちは「目新しいもの」をめざしたわけではありません。「使ってもらえる」ものにしたくて、「使われない理由」を考えていたら、自然とここに行き着いたのです。ほかにも、直感的に調理モードを選べるダイヤル、その調理法ごとに使用不可の食器を表示してくれるディスプレイなど、かんたんに使える工夫を凝らしました。
とくに安全面でこだわったのは、レンジモードとオーブンモードを間違えて器が溶けたり発火したりする危険を避けるため、どのモードで使い終わっても、初期画面に戻る仕組みにしたことです。お子さまにも、だれにでも、気軽に安心して使ってもらえるように。ひとつひとつの仕様に、当初のコンセプトが貫かれています。

初めての意欲作を、ぜひ皆さまに

象印初のオーブンレンジ開発を通して、私たちメンバーもいろんなチャレンジを経験しました。たとえば、あまり料理が得意ではないメンバーのひとりは、自宅で使用中のモニター商品で「レジグリ」機能を使って、人生初の「ハンバーグ」に挑戦。既製品のハンバーグのタネにチーズを入れて調理したところ、絶妙なとろけ加減に感動。子どもたちに「すごい!おいしい!」と拍手され、料理の楽しさに目覚めたそうです。また、ひっくり返さなくてもふっくら焼ける「レジグリ」機能を使った「焼き魚」で、魚のおいしさを見直したというメンバーもいます。
「毎日、皆さまの食卓を支える、とことん使えるオーブンレンジでありたい」。そんな思いを込めて、“Everyday”“Everyone”“Every dish”という言葉を含めた「EVERINO(エブリノ)」という名前をつけました。これから、たくさんのご家庭で必要不可欠な存在になっていけることを願っています。

SECRET STORY.

象印ものづくりの
「ここだけの話」

「開発のたびに、“もういいよ”と言いたくなるところまでこだわるのは、技術に自負があるのはもちろん、使う人に喜ばれたいからですね」

稗田 雅則/商品企画担当

稗田 雅則

「この商品も、徹底して普段使いにこだわりました。お客さまの声に応えるものづくりをめざす、それが象印らしさですね」

石井 琢也/設計開発担当

石井 琢也

所属部署・内容は取材当時(2022年7月)のものです。