
使いやすさこそ、最高の機能
「思いきって買ったのに、しまい込んで使ってない」。これまでの自動調理なべユーザーから聞こえた残念な本音が、私たちの出発点となりました。どんなに機能が多くても、使われなければ無用の長物。そこで今回の商品では、象印が誇る“圧力”技術をあえて採用せず、代わりにコンパクトさや使い勝手をとことん追求していこうと決めました。
もちろん、圧力調理には硬い食材を早く柔らかくできるメリットがあります。ただ、いち生活者として考えたとき、「ほったらかし」で料理ができることによって自由な時間を産み出せる“時産”も、同じぐらい魅力があると感じたのです。

料理をラクにする「パック調理」
生活者の目線に立ってみると、ひとことで“料理”といっても、たくさんの過程があるとわかります。献立、買い出し、食材の下ごしらえ、調理、片付け…。そのすべてのステップにおいて、「便利だな」と実感できる商品をめざしたい。そこで注目したのが、パックの中に食材と調味料を入れるだけ、準備も片付けも楽ちんな「パック調理」です。よく本や雑誌でも取り上げられていますが、じつは、かなり失敗しやすい調理法なんです。
失敗の主な原因は、「加熱することでパック内の空気がふくらんで、食材に熱が届かない」、あるいは「パックの閉じ方が甘くて、水が入りこんでしまう」こと。これらを防ぐため、独自に設計したのが付属品の「パックホルダー」。パックの口を開けたままセットするだけで、中の空気が抜けて食材とパックが密着し、きちんと調理ができる優れものです。
▲ 準備も片付けも楽ちんな「パック調理」
▲ パックの口を開けたままセットするだけ
ありえないサイズを執念で実現
もうひとつ、使い勝手の面でこだわったのが、商品のサイズや容量です。本体が大きすぎると邪魔になりますが、作れる料理の量が足りずに追加で調理するようでは、自動調理の意味がありません。考えた末に、企画担当が設計担当に持ちかけたのは、「6人前の容量で、他社の4人前の商品と同じサイズ」という、ほとんど不可能と思われるオーダーでした。それでも、納得のいく商品のためにはやるしかない、と安全性や耐久性を保つギリギリのラインを模索。通常の2倍ぐらい試作を重ね、ついに目標のサイズ・容量にいたりました。
コンパクトに収まったおかげで、どんなキッチンにも置きやすく、移動やお手入れもスムーズ。STAN.らしいデザインと相まって、出しっぱなしにしておきたくなる家電となりました。

なべもレシピブックも技あり
サイズや機能はとことんダイエットしていますが、ここぞというポイントには工夫を盛り込んでいます。たとえば、ふくれた豆や誤使用によって膨らんだパックなどが蒸気口をふさがないよう、内ぶたに特殊な構造を加えて安全に。ムラなくおいしく仕上がるよう、なべは蓄熱性に優れたホーロー製。強さも軽さもちょうどいい“厚さ2mm”を保つため、生産現場と何度もやりとりを重ねました。直火にかけて温め直しもできるんですよ。
さらに、商品についてくるレシピブックも「つくりやすさ」を重視。いつもの「カレー」や「煮物」から、ちょっと特別な日の「ローストビーフ」まで。めったに使わない食材は避け、いつも冷蔵庫にあるものやスーパーなどで手軽に買えるものを活かし、ひと手間かけたおいしさになる献立を厳選しました。
▲ なべは蓄熱性に優れ、直火にかけて温め直しもできる
▲ 「カレー」などの日常使いのレシピも充実
中身で選ばれるSTAN.の新顔
企画担当でも設計担当でも、仕事がきっかけで料理に詳しくなるスタッフは多くいます。そのなかで偶然にも、私たちは2人揃って“根っからの料理好き”。自分たちの実感やこだわりをつめこんだ結果、自他ともに「いいものができた!」と認める商品を生み出すことができました。
発売後、とくに嬉しかったのは、デザインが注目されるSTAN.シリーズでありながら、機能優先で購入してくださったお客さまが多かったこと。社員としてだけでなく、いち料理好きとしても、「こだわりをわかってもらえた」という喜びを味わえました。あとは、もっと多くの方々に、これまでになかった商品の魅力が伝わっていくのを願うのみです。

いろんな意味で“失敗しません”
あらゆるキッチンツールと同じように、この「自動調理なべ」も、ご自宅のキッチンで使ってみてはじめて、本当の「使いやすさ」や「ひと味違うおいしさ」を実感できると思います。そこで、迷っている方にお試しいただけるよう、象印の「レンタルサービス」のラインアップに加えることに。人気ナンバーワンのアイテムとなりました。
まずは一度、使ってみていただきたいです。手間のかからない家庭料理を愛する私たちの工夫がつまっているので、どなたでも簡単においしく作れるようになっています。いろんな意味で“失敗しない”自動調理なべが、毎日のお料理の頼れるパートナーになれることを願っています。

象印ものづくりの
「ここだけの話」
「コロナ禍で大がかりな販促イベント等ができない中、ひそかにクチコミ活動をしてくれているのが私の妻。
商品に興味があるパパ・ママ友が多いそうです」
貫名 明/設計開発担当
「じつは、我が家も。家事や子どもの習いごとの送迎など、“ほったらかし”の時間を活かせることが、いまどきのご家族に響いているんだと思います」
三嶋 一徳/商品企画担当
所属部署・内容は取材当時(2022年5月)のものです。