
結論、「小さい」は使える
コロナ禍をきっかけに、“テーブル調理家電”が注目され、コンパクトな商品が続々とあらわれました。象印のホットプレートも人気ですが、サイズはどれも大きめ。「これまでのサイズや機能にとらわれず、新しいテーブル調理家電を考えよう」と集められたのが、私たち開発メンバーでした。そこでまずは、「本当にコンパクトでも使えるのか?」という素朴な疑問から検証。実際に他社の商品を試して、「意外に使える」と実感したことで、「このサイズが、新しい世界をひらくかも」という期待が高まりました。
さっそくグループインタビューをおこない、実際の利用者がどこに魅力を感じているかを聞き込み。「12cmのパンケーキが2枚焼ける」サイズや「出しっぱなし」にできるデザインといった仕様のほか、「毎日の料理がもっと楽しみになる」というコンセプトが決まりました。

選んでもらえる価値をつくる
ちょうどいいサイズが決まり、コンセプトも定まったところで、もうひとつ、「他にはない、この商品だけの特徴がほしい」と考えるようになりました。従来のホットプレートにできること以外にも、日常的に使えて、商品の出番が増えるような機能がきっとある。それこそが、多くのなかから象印を選んでもらえる価値となるはず。そう考えて、さまざまな可能性を検証した結果、これだと思ったのが「無水調理」でした。
無水調理は、水の代わりに食材が持っている水分や油分を生かした調理法で、水に溶けやすいビタミンやミネラルを損ないにくく、栄養素をまるごと摂っていただけます。フタを閉めるだけのカンタンさも魅力で、実際にグループインタビューでも、「こんな機能がつくなら、ほしい!」という心強い意見を聞くことができました。

使われなければ、しまい込まれる
カンタンさが魅力の無水調理ですが、その機能をつくりだすのは苦労の連続でした。とくに大きな壁となったのが、ウォーターシールというフタとナベを密着させる “水の膜”。激しく沸騰すると、水滴になって周りに飛び散ります。それを、「そういうものだから」で済ませないのが象印。なべとふたのカタチを改良し、水滴の飛び散りを抑えることに。本体の下に紙を敷き、飛んだ水滴をひとつずつ数えて効果を確かめ、ついに納得のいく構造にたどり着きました。
たとえ些細なことでも、なにか気になるところがあれば、お客さまは使う気をそがれます。すると、どんなにデザインや機能が良くても、結局は戸棚の奥深くへ。とことん普段使いしてほしい商品だからこそ、ストレスなく使える品質をめざしました。

出しっぱなしの毎日を想定
平面プレートとたこ焼きプレートに、無水調理もできる深なべが加わることで、“デイリー”という名前どおり、1年365日キッチンや食卓で活躍してくれる1台がついに完成。「忙しい朝は目玉焼きとウィンナーを同時に焼いて、昼は無水カレー、夜はお鍋…」と、一週間分の献立をシミュレーションしたところ、「これなら、出しっぱなしになっちゃうよね」という有能ぶりをあらためて確かめることができました。
使い方は自由自在ですが、この商品ならではのレシピもウェブでご紹介。容量にこだわった深なべを活用してもらいたくて、4人前/6人前の分量を併記しています。“4人前つくって食べきる” “6人前つくって残りはお弁当に入れる”など、生活シーンに合わせてつくる分量を選べるようにしました。

新しいサイズ、定番の品質
いちから商品をつくる際には、「どんなお客さまに」「どう使ってもらうか」をイメージすることが大切です。このデイリーコンパクトプレートの場合、まだ家電を買い揃えていない、若いご家庭・単身の方にも使ってもらえたら、と思いながらつくりました。
シンプルでスタイリッシュだけれど、熱いプレートのフチに手が当たりにくい設計だから、幼いお子さまにも安心。ヒーター部分はパカッと取り外せるので、本体の隙間に食材をこぼしてもお手入れが楽ちん。象印がホットプレートで培ってきた安全設計と使いやすさ、そしてきめ細かな工夫が凝縮されているからこそ、「カンタンなのに本格的」な家電を所有するよろこびを、実感していただけると信じています。
▲ 本体ガードはパカッと取り外し、丸洗いが可能
▲ プレートのフチに手が当たりにくい設計
食卓の風景を変える一台へ
開発のきっかけは、いま話題のテーブル調理家電。けれど、使い勝手を追求するうち、場所にとらわれずどこでも使える方がいい、と考えるようになりました。小さいから、テーブルにもキッチンにも自由に持ち運べます。キッチンでは、無水調理ができる高級なべの代わりになるし、テーブルでは、焼肉でもお鍋でも出来たてのアツアツを楽しめる。どんな風に使われるかを想像するほど、新しい食卓や家族の風景が浮かんできてワクワクします。
ありそうでなかった、象印ならではのデイリーコンパクトプレート。ぜひ、たくさんの方に、私たちの想像を上回る楽しみ方をしていただきたいです。

象印ものづくりの
「ここだけの話」
「ジャンルに関係なく、普段から“使いやすい”と感じたモノのサイズや仕組みをチェック。その理由を考えるようにしています」
安藤 裕樹/商品企画担当
「機能や安全性はもちろん、お手入れのしやすさなども大切な品質のひとつ。使う人の立場で考えることを大切にしていきたいです」
村上 浩一/設計開発担当
所属部署・内容は掲載時(2023年7月)のものです。