気候変動への取り組み
気候変動問題における責任
気候変動の影響は年々深刻さを増しており、経済・社会・環境に大きな影響を及ぼしています。2015年には国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)において2020年以降の温室効果ガス排出削減等のための新たな国際枠組み「パリ協定」が採択され、わが国でも温室効果ガスの削減目標として、2030年度に温室効果ガスを2013年度から46%削減、2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロとする目標を掲げています。
「暮らしをつくる」を企業理念に掲げる象印マホービングループにおいても、社会と人々の暮らしにおける脱炭素社会の実現に貢献する責任があると認識しています。
地球温暖化防止のための象印の活動
当社グループは、地球環境問題をはじめ、人権の尊重、従業員の健康、労働環境への配慮や公正・適切な処遇を実現するための啓蒙活動などサステナビリティを巡るあらゆる課題に取り組んでいます。地球温暖化防止への取り組みにおいては、中期経営計画「SHIFT」でESGにおける重要課題および目標値を定め、温室効果ガスの削減や、環境配慮型製品の創出などに取り組んでいます。
TCFD提言に基づく情報開示
当社グループは、このたび「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」が公表した最終報告書へ賛同し、CSR推進委員会において自社の事業活動全体における気候変動リスクなどの分析と特定を行い、TCFDが提言するフレームワークを活用した情報開示を行いました。今後もTCFD提言に沿った気候変動関連情報の開示を進めることで、さらなる脱炭素化の推進を図っていきます。また、当社のコア技術である真空断熱技術の活用の検討や、2030年度末までにグループ全体のCO2排出量の50%削減(2019年度比)、2050年度末までに排出量の実質ゼロ達成など、気候変動問題への貢献度向上を目指した活動を行っていきます。
※ 年度:前年10月~当年9月-
1ガバナンス
世界的な課題となっている気候変動リスクへの対応は当社グループとしても重要な課題の1つと認識しています。当社グループでは、取締役会の監督のもと、代表取締役 社長執行役員を委員長とした取締役で構成するCSR推進委員会が、気候変動関連を含むグループ全体のリスク分析と対応を行っています。
CSR推進委員会では、中期経営計画で設定した環境目標の達成に向けて、半期ごとに実行計画の進捗確認や対策の協議などPDCAを回すことで、気候変動に関するリスク分析と対応を行っています。取締役会は、CSR推進委員会から重要事項について報告を受け、気候関連課題への対応方針および実行計画等についても審議・監督を行っています。 -
2戦略
シナリオ分析の概要
当社グループでは、TCFD提言にて例示されている気候変動がもたらすリスク・機会を元に、シナリオ分析を実施しました。
シナリオ分析においては、2℃以下シナリオを含む複数の温度帯のシナリオを選択、設定していく必要があるため、移行面で影響が顕在化する1.5℃シナリオと物理面での影響が顕在化する4℃シナリオの2つのシナリオを選択しました。1.5℃シナリオ※1気候変動に対し厳しい対策が取られ、2100年時点において、産業革命時期比の気温上昇が1.5℃程度に抑制されるシナリオ。
※1 インパクトを試算する際のパラメーターは、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)、国際エネルギー機関(IEA)の情報を参考にRCP2.6シナリオを使用。
気候変動対応が強められ、政策規制、市場、技術、評判等における移行リスクが高まるシナリオ。4℃シナリオ※2気候変動への厳格な対策が取られず、2100年時点において、産業革命時期比4℃程度気温が上昇するシナリオ。
※2 インパクトを試算する際のパラメーターは、IPCC、IEAの情報を参考にRCP8.5シナリオを使用。
自然災害の激甚化、海面上昇や異常気象の増加などの物理的リスクが高まるシナリオ。気候変動に関する主なリスクと機会
◎:影響が大きい ◯:やや大きな影響 △:影響は軽微
気候変動リスク/機会の項目 世の中の変化 想定されるシナリオ リスク 機会 発生時期 1.5
℃
シ
ナ
リ
オ移
行
リ
ス
ク
・
機
会政策・法規制 温室効果ガス排出量・環境配慮に関する規制強化 規制対応にかかるコスト、脱炭素移行コストの発生 △ 中・長期 炭素税、排出権取引の導入 炭素税、排出権取引の導入コストの発生 ◯ 中・長期 市場・技術 低炭素・脱炭素移行の急進 設備投資、再生可能エネルギー転換コストが発生 △ 短・中期 真空断熱技術を応用した製品開発による低消費電力への貢献 ◯ 中・長期 循環型社会の拡大 資源利用・リサイクルによる環境配慮が拡大し、持続性・再利用性に富んだ製品需要が増加 ◯ 中・長期 省エネ規格の厳格化 厳格化する省エネ基準をクリアするための製品設計の負荷増加 △ 中・長期 資源価格の高騰 原材料の調達コストが増加 △ 中・長期 評判 消費者嗜好の変化 環境配慮意識の拡大に伴い、省エネ性能の高いマホービン製品の需要拡大 ◯ 中・長期 エネルギー効率の観点による、スマート家電の普及・新規参入 △ 長期 4
℃
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会慢性 降水・気象パターンの変化
(降雨量の増加、平均気温の上昇)降雨量増加による従業員の安全性の確保 △ 長期 熱中症対策の観点から、当社製品の需要が増加 △ 長期 急性 異常気象(台風、山火事、洪水、暴風雨)の激甚化および増加 自然災害により原材料の供給が停止 ◯ 長期 生産拠点やサプライヤーの被災による操業停止 ◯ 長期 自然災害の増加に伴う物的損害や販売機会損失の発生 △ 長期 主要拠点において、災害対策に関する設備投資コストの発生 △ 中・長期 - ※ 影響が大きい
・・・事業および財務への影響が非常に大きくなることが想定される - ※ やや大きな影響
・・・事業および財務への影響がやや大きくなることが想定される - ※ 影響は軽微
・・・事業および財務への影響は軽微であることが想定される - ※ 短・中期
・・・現在〜2030年以内に発生する可能性が高い - ※ 中・長期
・・・2030年~2050年の間に発生する可能性が高い - ※ 長期
・・・2050年以降に発生する可能性が高い
移行リスク・機会:脱炭素シナリオ(1.5℃)
移行リスク・機会については、1.5℃目標達成に向けて、低炭素経済への移行に関連したさまざまな規制などが導入される脱炭素シナリオに基づいて検討しました。
脱炭素シナリオでは、政府の環境規制強化に伴う炭素税導入や、再生可能エネルギー需要の増加による価格上昇など費用の増加、世界規模での地球温暖化対策が講じられることによる資源調達費用の増加が想定されます。当社グループでは、再生可能エネルギーの導入に加え、主要な工場においてLED照明を導入、一部建屋では屋根に断熱効果のある塗料を採用するなど省エネ、節電に取り組むことで財務的な影響は軽減される見込みです。
一方で、環境配慮意識の拡大に伴い、省エネ性能の高いマホービン製品や、持続性・再利用性に富んだ製品需要の増加が見込まれます。「暮らしをつくる」を企業理念に掲げる当社グループは、社会と人々の暮らしにおける脱炭素社会の実現を目指し、真空断熱技術を応用した製品開発により、低消費電力社会の実現へ貢献していきます。物理リスク・機会:温暖化進行シナリオ(4℃)
物理リスク・機会では、気温上昇による熱中症対策の観点から、当社製品の需要増加が一定程度見込めるものと想定されますが、温暖化進行シナリオでは、異常気象による自然災害の発生に伴う、原材料供給や生産拠点の停止、サプライチェーンの断絶が大きなリスクとなります。また、被災や気温上昇による事業活動の停止を回避するために、主要拠点において、災害対策や空調に関する設備投資コストが発生します。
当社グループは気候変動リスクを含む大災害に対応できるよう、BCP(事業継続計画)体制を全社ベ一スで策定し、緊急時にも業務を継続できるよう備えていきます。今後も、技術革新を見据えた対策の見直しを進めていきます。炭素税の導入による影響
気候変動リスクによる財務的影響については、政府の環境規制強化に伴う炭素税の導入によるものが考えられます。そのため、温室効果ガス排出量が2021年度と同等の場合の4℃シナリオおよび1.5℃シナリオにおける2030年および2050年の炭素税導入に伴う影響額を試算しました。また、試算にあたってはIEAのシナリオや国際再生可能エネルギー機関(IRENA)のシナリオ、現在の炭素価格(排出量取引制度、炭素税、エネルギー課税)を用いて試算しています。なお、今後、再生可能エネルギーの導入などにより温室効果ガス排出量を削減していく予定のため、実際に炭素税が導入される時点では、この影響は軽減される見込みです。
1.5℃シナリオ 4℃シナリオ 炭素税価格
(円/t-CO2)炭素税導入に伴うコスト増
(百万円/年)炭素税価格
(円/t-CO2)炭素税導入に伴うコスト増
(百万円/年)2030年時点 約10,000円 約260百万円 約2,900円 約70百万円 2050年時点 約18,000円 約430百万円 約5,200円 約120百万円 前提条件:参照シナリオ「STEPSシナリオ(導入済みもしくは公式発表済みの政策が実施された場合のシナリオ)、IEA(2020)「World Energy Outlook 2020」」
試算データ:当社グループ 温室効果ガス排出量(2021年度):24,200t-CO2
※ 年度:前年10月~当年9月 - ※ 影響が大きい
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3リスク管理
当社グループのリスク管理体制は、「リスク管理基本規程」に基づき、適切な予防対策を講じています。
気候変動に関するリスクも全社的な重要リスクの一つと位置付けており、気候変動によって受ける影響を把握し評価するため、複数のシナリオに基づく分析を行い、気候変動リスク・機会を特定しています。特定したリスク・機会はCSR推進委員会を中心に議論し、重要度の高いものについては、取締役会へ報告されます。また、特定した気候変動リスクへの対策は、中期経営計画で施策や目標を設定し、グループ全体に展開して具体的な取り組みを行っています。進捗についてはCSR推進委員会で確認し、新たな課題を抽出しながら継続的な改善を実施しています。 -
4指標と目標
温室効果ガス排出量
2021年度の温室効果ガス排出量は、Scope1(事業による直接排出)は2,360t、Scope2(電力消費による間接排出)は21,840tでした。
当社グループは、気候変動が社会の喫緊の課題であると認識し、温室効果ガス削減や省エネルギー化に取り組んでいます。持続可能な社会の実現に向けて、Scope1、2について、「2030年度末までにグループ全体のCO2排出量の50%削減(2019年度比)、2050年度末までに排出量の実質ゼロ達成」を目標としています。
温室効果ガス排出量の削減にあたっては、省エネ、節電を心がけるとともに、化石燃料を用いない再生可能エネルギーの導入や国が認証するJ-クレジット制度を積極的に活用し脱炭素社会の実現を目指していきます。
今後はScope3についても算出し、サプライチェーンでの環境負荷の評価と改善に努める予定です。また、事業を通じて社会課題の解決に取り組むことで、持続可能な社会の実現に貢献していきます。
※ 年度:前年10月~当年9月温室効果ガス削減目標
取り組み事例
生産系事業所でのCO2削減活動
象印ファクトリー・ジャパン大阪工場では、構内の投光器の水銀灯をすべて廃止し、長寿命で省エネ効果の高いLEDを使用しています。照明についても、順次LED化を進めています。また、工場の一部建屋では屋根に断熱効果のある塗料を採用しているほか、再生可能エネルギー由来の非化石証書の持つ環境価値を付加した電力を一部使用するなど、消費エネルギーを抑えて高い生産性を上げる工場の実現を目指しています。
ユニオン象印でのソーラーパネル設置
タイにある製造工場のユニオン象印では、工場屋根や敷地内にソーラーパネルを設置し、太陽光発電による再生可能エネルギー由来の電力の使用します。CO2排出を削減し、脱炭素社会の実現に貢献します。
環境データ
- 国内
- 海外
※1 数値は生産工場の値 ※2 年度:前年10月~当年9月