
なぜ象印がサーキュレーターを?
「炊飯ジャーやポットといえば象印」というイメージが強く、それに比べると認知が広まっていない象印ブランドの生活家電。それでも、加湿器やふとん乾燥機など、何十年も前から多くのヒット商品を世に送り出してきました。これらを生む原動力となっているのが、「暮らしを快適にしたい」という思いです。それも、象印ならではの発想と技術で。
今回、私たちが開発に取り組んでつくったサーキュレーターは、すでに多くの家電メーカーからさまざまな商品が売り出されているカテゴリーです。背景にあるのは、昨今の猛暑や換気への意識で高まる消費者のニーズ。そのなかで、どうすれば「これがいい」「使ってみたい」と思ってもらえるものを提供できるのか。まずは、実際に使っているお客さまのリアルな声に耳を傾けるところから、象印らしい新たなサーキュレーターづくりの一歩を踏み出しました。

扇風機代わりにサーキュレーターを
オンラインでのアンケートから、対面のグループインタビューまで。手法や角度を変えて丁寧に利用者の声を集めた結果、ある大きな課題点が浮かびあがりました。それは、多くのひとが「サーキュレーターを扇風機代わりに使っている」ということ。かくいう私たちも、この開発に携わるまでは同じ感覚でした。
扇風機が「やわらかく広がる風」なのに対して、サーキュレーターは「強くまっすぐ進む風」。それぞれに風の種類が違うことに気づかないまま、サーキュレーターを扇風機代わりに使っている方がとても多かったのです。この2つの風を1台できちんと使い分けられたら、日々の暮らしがもっと心地よく、快適になるはず。こうして、自社初にして業界としても画期的な、「2WAY」への挑戦がはじまったのです。
▲ やわらかく広がる「扇風機」の風
▲ 強くまっすぐ進む「サーキュレーター」の風
ひとつの風を2つにするために
2WAY、と言葉にするのは簡単ですが、かたちにするまでの道のりは試行錯誤の連続。本格的な設計に入る前から「どんな構造にすればいいか」と、担当チームだけでなくグループ全員でいろんなアイデアを出しあいました。
もちろん最大の難問は、性質が異なる2つの風をどう切りかえるか。初めは「まっすぐ進む風」を生むスパイラル型の前ガードをベースとして、風の向きを変えるルーバーを使って風を広げようと考えました。ところが試してみると、まっすぐ進む風の勢いが強すぎて、思うように広がりません。そこで発想を逆転させ、ベースとなる前ガードは一般的な扇風機の形として、ルーバーで「広がる風をまっすぐ整える」というアプローチに切りかえたのです。そして、整えた風がサーキュレーターとして満足できるぐらいまっすぐになるよう、ルーバーの形状や枚数を変えながら、何十回も試作を繰り返しました。

使うひと目線にこだわった自動モード
こうして、ついに独自の2WAYが完成。この新しい機能が、お客さまの日常で本当に役立つように、“必ず搭載しよう”と決めていたのが、ワンタッチで2つの風の組み合わせ方をおまかせできる「自動モード」です。私たちの調査で明らかになったのは、「2つの風を組み合わせると、部屋の空気を効率よく混ぜられる」ということ。けれどユーザーの多くは、どのように運転すれば最適なのか分からず、一年中同じような角度で使用していたのです。そこで、部屋のすみずみまで空気を循環させる「標準モード」に加え、「夏モード」では冷たい空気、「冬モード」では暖かい空気を、より効率よく動かすモードを開発。さらに、洗濯物の部屋干しに便利な「衣類乾燥モード」や、設置する場所に合わせて「上下・左右の首振り角度が設定できるスイッチ」などの細かな機能も備えました。どれも、私たちが試作品を家に持ち帰って、「あったらいいな」と感じたものばかりです。
安心という名の快適
もちろん、2WAYや自動モードといった先進的な機能の一方、象印が大切にしている「使いやすさ」や「安全性」もしっかり実現しています。たとえば、「ホコリが気になる」という声が多かったガードや羽根の部分は、カンタンに分解できて水洗いが可能に。しかも、後ろのガードをはめ込むまでは運転しない、念入りな安全設計となっています。
また、取扱説明書には書かれていませんが、後ろガードの下部にあいている小さな穴には、衣類乾燥中に洗濯物から水が落ちてきても、内部に溜まらないようにという配慮が込められています。すべては、末長くご愛用いただけるように。ずっと安心して使いつづけられることも、快適な暮らしの大事な要素だと考えています。
快適な空間づくりの、新たな目印に
デザインチームの活躍もあり、機能美を感じさせるスタイリッシュなたたずまいとなったサーキュレーター。「2WAY」の新しさや自動モードへの評価も高く、発売前から手応えを感じています。これまでの知見や技術を応用できない、ほぼゼロからの開発となりましたが、そのぶん、新たな成果もたくさん。この商品を開発するために取得した10件ほどの特許は、今後の商品づくりにも活かせそうです。
正面に刻まれた象マークは、新たなカテゴリーにも取り組んでいることを知ってほしい、という私たちの意気込みの表れ。キッチンだけでなく、寝室やリビングなど、暮らしのあらゆる場所やシーンで、私たち象印ブランドが心地よさの象徴となれるように。これからも幅広く「快適な環境づくり」をめざし、みなさまの毎日を見つめていきます。





象印ものづくりの
「ここだけの話」
「夏だけでなく一年中使いたくなる、魅力的な商品になりました。象印だからこその丈夫さや持ち運びやすさも実現しているので、ぜひご活用ください」
山西 智士 / 設計開発担当
「なにも考えず、上手に使いこなしたい。そんな“使うひとの気持ち”にこだわることで、象印らしい生活家電をつくり出せたと感じています」
安藤 裕樹 / 商品企画担当
※所属部署・内容は取材当時(2026年4月)のものです。